多彩なカイゼン支援システム提供  製造現場の無理、無駄を削減

タイでシステム開発、パッケージ販売を手掛けるムーブ・タイランド(秋山大典MD)は、学校法人や民間企業向けにシステム開発・販売などを行うコンピュータムーブ(本社:山梨県甲斐市、秋山学社長)によって2015年に設立された。顧客のタイ進出に伴って、納品したシステムも移管されるケースが相次ぎ、それらの本格的なサポートおよび新市場開拓を兼ねての現地法人開設だった。設立から3年を経て、現状を秋山MDに聞いた。

映像分析で無駄なくす「OTRS」

タイでは主にパッケージシステムの販売を行っている。タイは日系製造業の一大拠点。工場向けに提案しているのは、生産現場のカイゼンを促す各種パッケージ類だ。「OTRS(オーティーアールエス)」は経営工学(Industrial Engineering)に基づいて開発されたソフトウェアで、映像による動作分析、時間分析などを通して、現場の作業時間短縮、省力化、コスト削減などを行うことが出来る。動作分析では、撮影した動画を簡単な操作で分析に取り込めるユーザーインターフェースを採用。分かりやすいグラフィックで表示する。「これまでは現場にストップウォッチを持ち込んで、各作業が全体の工程の中でどれくらい占めているかを測定したりしていました。このソフトなら、撮影した動画をソフト内で分割して、作業の中で何か有効で、何が無駄な動作かがビジュアル的に判別することもできます」。タイでも人件費は上昇傾向にある。生産効率の向上は今後も避けられない。映像なら誰もが理解しやすい。言葉では分かりづらいカンやコツを伝える動画マニュアルを簡易に作成できる機能を持つほか、動作分析結果を組み合わせて精度の高い作業編成シミュレーションも制作可能だ。日本では既に大手自動車メーカーなどに4,000本以上の納入実績を持っている。

測定データ自動入力・品質管理ソフトウェア「QC プロ」も扱っている。測定データを自動で記録、計算、解析するソフトウェアで、パソコンに不慣れでも簡単な操作で高度な品質管理業務が行える。「テレメジャー」を利用した無線入力なら、すべての作業が自動化されるため、読み取りミスや転記ミス、改ざんの心配がなく、正確な検査成績表が出来上がる。測定データのNG判定を自動で行い、音と色で知らせる。最大、最小、平均など様々な統計処理や、測定項目間の計算結果もリアルタイムで表示しながら入力できる。「紙に書いて、打ち込むのは品質管理の本来の仕事ではないはずです。そこからのデータの解析が本来の業務です。売り始めた当初は“タイでは人がカバーできるのでまだ”というお話が多かったです。ただ最近は、世界各国に輸出されるお客様もおり、しっかりした品質管理と製品のトレーサビリティの観点から、引き合いをいただいています」。

従業員のスキルアップも生産性向上に直結する。インターネットを利用したeラーニングの学習管理システム「Knowledge Deliver(ナレッジ・デリバー)」は、eラーニングに必須の教材作成、学習、運用管理の3つの機能を標準搭載。パソコン、スマートフォン、タブレットでも学べるマルチデバイス対応で、日本では企業、官公庁、医療機関などに多数の実績がある。「日本のeラーニング市場は1,500億円、タイは750億円程度と見られており、人口、物価から見るとタイの市場は日本とそん色ありません。タイではスマートフォンが普及してeラーニングでトレーニングをしやすい環境にあります。従業員の教育、安全対策などとしても今後、広まっていくのでは。現場の改善だけでなく、人の改善という面から、販売に注力していきたい」と話す。

倉庫管理システムを自社開発

パッケージ販売だけでなく、日本と同様、システムの自社開発も行っている。同社で展開している倉庫ロケーション管理システムは、入庫時にハンディターミナルで品目をスキャンすると、保管場所をナビゲート。品目のロケーション、在庫数はパソコンで簡単に調べることができる。フリーロケーションと固定ロケーションの2種類が対応可能。荷物入庫時のアドレス管理により、先入先出の効率的な荷物管理が実現できる。「タイ人の方も簡単に扱えるように、必要な機能を備えたシンプルなユーザーインターフェースで提供しています」。オフィス向けにはタイの税制や商習慣をカバーし、高いシェアを持つ会計、ERPパッケージシステム「DAccount」「Formula ERP」などや、企業目標を効果的、効率的に実現する組織、人材活用システム「HUMANO」を提供している。もともと日本では大学の教務システムからスタートしており、今も学校向けのシステム販売が事業の柱の一つになっている。35年のノウハウを生かし、タイでも日本人学校に校務システムを納入。日本市場は少子化傾向にあり、「海外の学校にもチャレンジしていきたい」と構想する。

改善作業に生かせる豊富なソフトのラインナップを抱えている。それでも、秋山MDは「本来、ソフトは買うのも、使うのも目的ではありません。ソフトはツールであって、改善作業の中のほんの一部。ソフトは答えを出してくれません。分析して、改善につなげる手助けをしてくれるだけです」と明言する。何が具体的に問題点で、どう修正する必要があるのか、従業員がそれらを理解しなければ、ソフトは宝の持ち腐れになってしまう。そこでムーブ・タイランドでは泰日工業大学と協力して、生産技術やカイゼンに関するタイ人従業員対象のセミナーを今年5月に開催した。泰日工業大学の一室を借り、日本留学経験を持つ教授らがリーン生産方式やカイゼンのコンセプトを解説。その後に、ムーブ・タイランドの従業員がOTRSの紹介をした。日系企業に勤める40名ほどのタイ人従業員が熱心に耳を傾けた。「大学にも企業側から“カイゼンのエンジニアが欲しい”という要望が出ているそうです。ただ、カイゼン自体は日本の文化から生まれてきたもの。それをタイ人が理解して、タイで根付かせていくには、タイの方から説明してもらうのが一番」と狙いを話す。

秋山MDは商社勤務時代の2005年から2012年までタイに駐在していた。2013年にコンピュータムーブに入社し、タイ進出を主導。2015年の開設時からMDとして赴任している。「(前回の駐在時に比べ)まったく違いますね。毎日、胃が痛いです」と苦笑しつつ、「タイの人に助けられています。もっと頑張りたい」と意気込む。

会社情報

会社名 MOVE(THAILAND)CO., LTD.
住所 23/15 Sorachai Building, 12th FL., Soi Sukhumvit 63, Sukhumvit Road., North Klongtan, Wattana, Bangkok 10110
お問い合わせ先 Tel:02-381-5771~2 Fax:02-381-5773  E-mail:d-akiyama@move-net.jp
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