泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第51回『タイにおけるICT政策』
タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、ラッティコンTNI情報技術学部長の『デジタル時代のICTの役割』の最後で、前号でIoTとインダストリー4.0、これらを担うTNI情報技術学部の人材育成を紹介しましたが、タイの情報通信技術(ICT)政策も、このドイツが先行する計画に基づいています。特に日系企業の皆さんが関心あると思われる事項を紹介します。
タイのICT政策
図は5月下旬クイーン・シリキット国際会議場で開かれた「デジタルタイランド」でタイ政府(情報通信技術省)が発表した、2020年を目標にしたICT政策である。「スマートタイランド2020」として、①スマート農業とスマートサービスからなる経済強化、②スマート健康とスマート学習からなる社会平等、③グリーンICTを推進するスマート環境を基にした環境にやさしい政策の3本柱からなる。一方、それにスマート政府がICTの人材育成と労働能力強化、ICTインフラ、ICT産業を支える構成である。そしてタイの経済と社会の発展のため、次の6つのICT戦略が紹介されおり、簡単にご紹介したい。
- 全国に高性能デジタルインフラを開発する。
- デジタル技術によって経済を推進する。
- デジタル技術によって質の高い社会を均等に作る。
- 政府機関の事業をすべてデジタル化する。
- デジタル経済と社会の時代のために人材を育成する。
- デジタル技術の使用に信頼と安全を保証する。
1.全国に高性能デジタルインフラを開発する
全国で高速インターネットが使えるようにする。すべての国民は、いつでも、どこでもインターネットへのアクセスと利用ができる。通信の安定や信頼できるインフラと公平・適切な使用料金を提供する。なお次の施策も実行する。
1) バンコクは「スマートシティ」になり、交通渋滞緩和に努力(2016年2月17日の発表)
2) プーケットスマートシティ3年計画(2016年度より、予算: 4億3,000万バーツ)
2.デジタル技術によって経済を推進する
生産、貿易・投資部門の効率を向上させるためにデジタル技術を使用して、経済を成長させる。国の新たな経済基盤を促進するために、デジタル企業を支援する。タイがアジアのデジタル・ハブとなるように進める。具体的には次の4つを推進する。
3. デジタル技術によって質の高い社会を均等に作る
すべての国民がデジタル技術へ簡単にアクセスができる環境を作る。特に都会から離れて住む農民たち、高齢者、恵まれない人達、障害者などがデジタル技術によって政府のサービスを受けられる。
4. 政府機関の事業をすべてデジタル化する
中央・地方政府機関の経営とサービスの効率を向上するため、デジタル技術を使用する。そして、国民は物理的な制約なしで単純に行政サービスを受けられる。2011年に情報通信技術省(ICT省)がEGA(電子政府庁)を設立、政府共通ネットワークインフラ、政府蔵宇土サービス、政府データ安全モニタリング、e政府サービス用のモーバイルアプリを担当。
5. デジタル経済と社会の時代のために人材を育成する
すべての職業のため、デジタル技術を上手に使用する能力を持つ人材を育成する。能力開発を促進することにより、専門知識特定のデジタル技術を持つ人材が得られ、将来のニーズに対応する。SiPA(ソフトウエア産業振興庁)は、全国各地でICTの公共無料講座を行う。
6. デジタル技術の使用に信頼と安全を保証する
デジタル情報のオンライン交換の安全と信頼を保証するため、法律、規制、規則などを定める。Electronic Transactions Development Agency (電子取引開発庁) の主な役割:オンライン・取引をサポートするための法令の制定と改善、セキュリティの保護と予防、ICT使用基準の開発と利用を促進。
編者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問