タイ版 会計・税務・法務
【第95回】 BOIに関する投資奨励法の部分改正について
Q:今般、投資奨励法が一部変わったと聞いたのですが、どのような変更がなされたのでしょうか?
A:1月25日付で、以下のような7つの項目にわたる一部改訂がなされております。
- 研究開発に関する材料輸入について、トレーニングに関するものの輸入も含んだ形での輸入関税の免税(Section 30/1の追加)。
;より研究開発分野の投資の奨励を進めている中において免税対象の拡大を図ったものと考えられます。
- 先進的技術や技術革新を利用したプロジェクトや研究開発に関する13年以下の所得税免税期間の付与(Section 31/1の追加)。
;これも、優先誘致分野とされるものについては、より長期の所得税免税期間が与えられることになります。
- 投資控除制度の導入: BOI投資プロジェクトにおいて投資された金額については、所得税免税がない場合において、通常の減価償却に加えて当該プロジェクトから収入が発生した日から数えて10年以内に、その投資金額の70%まで所得税から追加控除することができる(Section 31/2の追加)。
; この条文の具体的適用については、より詳細な解釈が望まれますが、大枠としては一種の追加投資控除を認めることにより、投資の誘致を図っているものと思われます。
- 投資委員会は、所得税免税プロジェクトとして通常は認可されないプロジェクトについても、特別に裁量において追加的な10年以内の所得税免税を与えることができる(Section 32の改訂)
;これまでは投資委員会の裁量では所得税免税恩典は与えられていませんでしたが、規定されている免税プロジェクト以外にも裁量で免税プロジェクトとして認可できる余地が認められることになったと考えられます。
- 所得税の免税の計算においては、税法に従うものとする(Section 32/1の追加)。
; 昨年の最高裁判決をうけて、税金の計算に関する税法と投資奨励法の競合について解釈を明確にしたものと思われます。
- 認可プロジェクトからの利益配当を受け取ったものについて、当該配当利益の益金参入控除。ただし、配当は免税期間終了後6カ月以内に行われるものとする(Section 34の改訂)。
; これまでは所得税免税期間中の配当受け取りにのみ免税とされていましたが、免税期間終了後6カ月と延長されることになりました。
- 輸出奨励措置について以下を付与することができる(Section 36の改訂)。
(1)輸出用の製品または生産物の生産、組み立て、または混合のため輸入される原料・必要材料に対する輸入税の免除。
(2)被奨励者が再輸出を日的として輸入する品目に対する輸入税の免除。
(3)被奨励者が輸出向けに生産し、または組み立てた製品、または生産物に対する輸出税の免除。
;これまであった増加額に応じた所得税の免税措置が廃止されたものです。
また、詳細や解釈がでておらず、英文、和文共にBOIよりも公表されていないなかですが、付加価値の高い研究投資活動をより誘致する姿勢が表れている改訂かと考えられます。
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著者プロフィール
小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk
2017年4月