タイ版 会計・税務・法務
【第100回】 印紙税の支払いについて
Q:最近、印紙税の支払い方法が変わったと聞きましたが、どのようなものでしょうか?
A:文書の作成や契約にあたってはタイにおいても一定の文書に対して印紙の支払いが義務付けられておりますが、今回は印紙税に関しての注意点と、最近変更のあった点について、以下解説させていただければと思います。
まず、印紙税の対象となる文書の範囲は、印紙税法で明確に定められておりますので、一度確認をいただければと思いますが、日本の印紙税の感覚と違ったものとしては、①消印義務者、②海外で作成された文書に関する規定、③印紙のない文書の効力、があげられるかと思います。まず、①の消印(英語ではCancel Stampといいます)ですが、日本の場合の規定は作成者、使用人、代理人、その他の従業者と広く許容していますが、一方タイにおいては、規定上は、例えば賃貸契約の場合ですと、印紙税の負担者は賃貸人、消印者は賃借人というふうに、明確に述べられています。これは文書種類ごとで決まっています。次に②の海外で作成された文書ですが、日本の場合は文書の作成地が海外であった場合、印紙税はかからないことになっていますが、タイの場合は文書がタイに持ち込まれた時点で印紙税を払わなければならないと規定されています。したがって、文書が日本で作成されタイに持ち込まれた場合には、日本の印紙税とタイの印紙税を支払うという形で、一種の二重課税が発生しますので、注意が必要です。また、③についてですが、日本では印紙税の支払いの有無と文書の効力は分離されており、たとえ印紙の添付がなくとも、文書の効力に影響はありませんが、タイの場合には印紙税を払っていない文書は、印紙税が支払われない限り、裁判上の証拠書類として使用できないという規定があります。この②、③は、海外からのローンでタイの企業が借り手となる場合において、契約書を日本で締結、その後タイに契約書を持ち込んだ際に印紙の支払い漏れが発生していた場合において、日本の貸主がタイの借手を、タイで訴えるような場合に問題となる点、そのような取引を行われる場合はご留意ください。
さて、この印紙税の支払い方法ですが、印紙を添付・消印する方法と現金で納付する方法の二つがあります。昨今、一定の文書について、これまでは印紙添付で認められていたのが、現金で納付に変更されたものがあります。これらは、主として会社設立時に必要な文書や定款変更時に提出する文書に添付するものです。頻繁に発生するような性質ではないですが、そうした取引の発生時にはこれまでとは違った現金納付が必要になってきます。
なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。
著者プロフィール
小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk
2017年9月