泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第24回『クリサダー学長に聞く 日本語学習とものづくり教育』
日本語学習を全学生に課す意味
TNIでは全学生に日本語学習を課していますが、ものづくり教育に続くTNIのもう1つの特長と言われる日本語教育はいかがですか?
クリサダー(以下、K):日本語は第一に日本のものづくりを理解する大きな手がかりであること、第二に日系企業就職に重要なツールでもあります。特にカイゼン、ホウレンソウ、五現主義など、単純に他の言語に翻訳できず、その背景、文化環境を理解してもらう必要があります。さらに最近の日系企業のタイ進出は、語学が必ずしも得意でない方が一人で来られることも多く、専門技術と日本語ができる人材を求めています。
グローバル時代を迎え、日系企業では英語力も重要になっていますが、TNIでは、日本語力は日本語能力試験N3-N4を、英語力はTOEIC600点を目標に、これからの国際コミュニケーション時代に対応できる人材を育成しています(*日本語能力試験認定の目安参照) 。もちろんこれらの目標を大きく上回る学生もいますが、N4日本語取得者で、はじめはゆっくりしか日本人とのやり取りができなかった卒業生でも、日本語を使う環境に配属されてしばらく経つと立派に日本人とタイ人の仲立ちをしている事例が見られます。
大学4年間の学習時間は約1500時間と限られ、TNIの場合、日本語・英語のみならず、専門技術を学習します。語学専門学校で1000時間を超えれば、簡単な通訳が可能なN2級レベルになる目標を設定できますが、この語学だけだと秘書業務中心の仕事になり、企業の各分野に従事する可能性は難しくなります。TNIでは、上記の授業時間の限界克服のため、個別指導の日本語チャットルールやボランティアとの自由会話時間、日本人交換留学生との交流、さらに短期・長期の日本語留学を奨励し、毎年200人以上の語学留学機会を設けることなどで、カバーしています。
日本語能力試験認定の目安
(2010年に日本語能力試験は4段階から5段階に改定される。ここでは前の基準を含め、分かりやすい目安をつけて紹介)
N1=社会生活、仕事、新聞など、幅広く使われる日本語を理解し、やり取りが可能 (漢字2千字・語彙1万語程度を習得)
N2=日常使われる日本語の理解に加え、やや高度なやりとりまで可能 (漢字1,000 字・語彙6,000語程度を習得、日本の大学留学希望者の目標)
N3=日常使われる日本語を理解 (就労の日本語、場面に応じたやりとりも可能、漢字700字・語彙3,500 語程度を習得)
N4=基本的な日本語を理解 (ゆっくりした会話でのやり取りが可能、漢字300字・語彙1, 500語程度を習得)
N5=基本的な日本語をある程度理解可能 (日常生活などサバイバル日本語が可能、漢字100字・語彙800語を習得)
TNI教育の特長
○タイでは革新的なものづくり、語学・コミュニケーションのやり方ですが、ほかの特長はいかがですか?
K:TNI教育を概念図で示すと別添のようになります。このように、専門能力と語学・コミュニケーション力が2大看板で、さらに管理基礎力と社会人基礎力を身につけます。これらは理論だけでなく、むしろ実践的な職場でインターンシップを通して習得する仕組みです。TNI WAYは、産業に必要な技術技能を身につけることに意味があるので、タイの教育システム・習得単位は同じでも、結果は革新的に違ってきます。つまり将来の中核産業人材を目指して、400社に上る企業の協力を得て産学連携インターンシップで学ぶことになります。