泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第39回 『ものつくり大とのインターンシップ交流』
タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、TNIが日本の協定校から受け入れる大学生の日系企業などでのインターンシップに焦点を当てます。日本からは、このほか、数日間の課題解決型(PBL)共同ワークショップ、数週間の異文化交流コースなど年間100人を超える学生に参加してもらっています。このインターンシップでは、3週間から6カ月バンコク等に滞在し、語学訓練から異文化コミュニケーション、専門学習および企業での研修体験という豊富な内容で、今回ご紹介するように、今後の人生への大きなきっかけになるようです
10大学から26人のインターンシップ受入れ
埼玉県のものつくり大学(IOT)との交流は、2010年度に始まり、当初相互に4人でしたが、本年度は6人になりました。学生の専攻や受入れ会社の事情などにより、内容が異なってきますが、IOTからは大体2カ月間、TNIからは2-4カ月の場合が多い様です。航空賃、保険代とある程度の生活費は、学生が自己負担する一方、宿泊費、学習費、生活費等の一定額は受入れ側負担で実施しています。なお今年度は10大学(芝浦工業大、群馬大、長岡技科大、長野高専、高知工科大、長岡高専、近畿大、府大高専、府大、ものつくり大)から26人を受け入れることになっています。
2015年度ものつくり大(IOT)からのインターンシップ生
本年度は、6月13日から8月12日までTNIと受入会社で各1カ月受け入れました。8月の日本帰国前に行われた総括反省会によれば、学生の目的達成と満足度は95-100%です。生産プロセスなど、全体理解で難しさがあるものの、タイ社会理解、異文化コミュニケーション・体験、さらにこの研修で、これからの生き方、人生の考え方などが変容する内容であったそうです。以下TNIと会社での内容と意見をご紹介します。
○TNIでの講習
- 全体に有益で内容を楽しむことができた。
- TNI生は、日本語が上手な人が多く、タイ語の勉強も手伝ってくれ、いろいろ連れて行ってもらった。ただ、タイ語は日本語で解説するよりも、発話・聞き取りに重点を置いてほしい。
- 専門学習も、特別カリキュラムを設定してもらい、日本語と英語で説明してくれて良かった。ただ2‐3回普通のタイ人学生の授業にも参加したかった。
- TNI生との課外活動も有益で交流を楽しんだ。日本では夏だけだが、タイは大自然に囲まれ、色々な経験を得た。
会社でのインターンシップ研修
- タイの研修で、仕事の考え方・取り組みが変わった。日本では、やや真面目過ぎる働き方で、時間に追われて働くやや暗いイメージがあったが、タイでは精神面、気持ちの持ち方が明るく、みな親しげで、楽しい感じでよかった。
- タイに来て、コミュニケーションのとり方が重要と理解。特に英語の重要性を認識し、これから習わねばいけないという良いきっかけになった。
- やや危ないが便利なバスなど、タイの生活も理解した。
- タイ人の印象は、より自由な感じで、交通ルールなどは日本と違い、バイクの4人乗りや歩道への乗り入れなどやや危ない面がある。
- 困ったのは特にバンコク郊外は犬が多く、取り巻かれることがあり、狂犬病の心配など怖かった。
TNI生のものつくり大と会社での研修
以下、4月1日―7月31日の4カ月短期留学した2人を紹介します。
○まず2カ月IOTで、5科目勉強:ティ君は、鋳造、溶接、自動車工学、材料評価、CAD/CAMを、ナムターンさんは、鋳造、溶接、経営工学、経営管理の基礎数学、実用英語を選択。実用英語はやさし過ぎたが、TNIの溶接実習は3時間だけで物足りなかったが、ものつくり大は毎週1回あって実践的でよかった由。
○後半2カ月は、日立オートモティブシステムズ社で、電子コントロールユニットや燃料噴射、プリント基板などを製造・生産管理・生産技術部門の順で研修を受ける。
- 日本の授業の雰囲気、教え方などを習えた。先生はいつも質問し、活気があった。
- 基本的に日本語が媒介言語で、特に、漢字が難しかったが、会社の人はみな優しく、「非番、PCB、半田」など分からない言葉を親切に教えてくれた。自分たちも続く後輩の見本になるように心掛けた。
- 大学では寮に住み、会社では3LDKの社宅。4月の大学時は雪も経験、5キロ離れた会社への自転車での行き帰りは、雨や台風のときは大変だったが、良い思い出とのこと。