泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第53回『TNIのこれまでの卒業生』

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。前回は、2016年11月に行った卒業式をご紹介しました。大学ではこの機会にこれまでの卒業生を一覧できるデータを作成しましたので、この表を中心に紹介させていただきます。写真は2016年11月13日(日)ラマ9世公園で行われた卒業式。荘厳な儀式のあと、先生との懇談、記念写真の光景があちこちで見られました。

TNI学部・大学院卒業生

学部 学科課程・英文略称・取得学士・修士 教育年度 合計
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
工学部 1.自動車工学(AE、工学士)   55 108 78 78 98 68 485
2.生産工学(PE、工学士)     26 43 30 38 41 178
3.コンピュータ工学(CE、工学士)     59 75 68 46 47 295
4.経営・ロジスティックス工学(IE、工学士)           1 11 12
情報技術学部 5.情報技術学(IT、科学士)   74 106 152 58 64 54 508
6.マルチメディア技術学(MT、科学士)         59 90 78 227
7.ビジネス情報技術学(BI、科学士)         38 36 18 92
経営学部 8.工業経営学(IM、経営学士)   74 89 116 72 88 75 514
9.日本語・経営学(BJ、経営学士)     104 170 155 174 153 756
10.工業経営学(社会人用)(IMC)、経営学士) 31 21 6 1       59
11.ビジネス・工業経営学(編入者等用)(BM、経営学士)       20 15 13 15 63
12.国際経営学(IB、経営学士)             73 73
学士取得者合計 31 224 498 655 573 648 633 3,262
大学院 1.工学技術学(MET、工学修士)       5 8 22 15 50
2.情報技術学(MIT、科学修士)         1 4 12 17
3.工業経営学(MIM、経営学修士) 34 30 43 37 39 43 25 251
4.上級企業経営学(EEM、経営学修士) 6 21 15 23 29 27 16 137
5.日本語・経営学(MBJ、経営学修士)             5 5
大学院修士取得者合計 40 51 58 65 77 96 73 460
全合計 71 275 556 720 650 744 706 3,722

 

  • TNIの教育年度は6月スタートで、翌年の5月に終わります。(タイの一般大学は、AEC発足に合わせ、8月下旬スタートが多くなっていますが、TNIの場合、従来のタイの真夏の3-5月を休暇期間にする一方、日本の提携大学や企業の年度に連動しています)。卒業式(学位授与式)は通常11月にあり、今回2016年11月13日(日)に行いましたが、その対象は2015教育年度の修了者です。
  • これまでの学士取得者は合計3,262人です。通常は、TNI開学の2007年教育年度入学から4年後の2010年教育年度が第1期卒業生ですが、10、No.11は社会人用・編入者等用のプログラムで、2年半で終了するのが一般的で、2009教育年度から卒業生がいます。(No.10は、主として授業は土日の社会人用プログラムでしたが、教育省のルール改訂もあり、2012年度で終了しました。 一方、カレッジなどからの編入者や工場などに勤務している学生用にNo.11を設け、授業は土日と平日の夕方など学生の条件に合わせた柔軟な対応をとっています)。
  • 大学院も通常は土日授業+特定の平日の夕方の社会人用プログラムで、卒業年は、2009教育年度から発生しており、卒業生合計は460人です。
  • 2016年11月13日(日)に卒業式を迎えた2015年教育年度修了の卒業生は、学士取得者は633人であり、大学院修士取得者は73人で、合計706人になります。

 

 

 

 

読み取れるタイと日本の大学の違い

  • 学部については、通常4年で単位取得し、卒業することになります。ただ、タイの大学全般に言えることですが、日本と違って、あまり簡単に卒業できないということです。例えば、必須科目1単位(例えば日本語)でも落とすと進級できず、卒業できません。また出席は8割以上など、単位取得条件は厳しく、それで、次の項の理由もあり、3月に登録した入学時の学生と4年後の卒業時の学生数は、学科によっては30-40%も減少することもあります。
  • TNIの場合、タイの一般大学に比して情報開示は進んでいると思われますが、それでも数値公開努力は限られます。TNIの入学時の公開数値は、TNI入試を経た3月の数値である一方、高等教育局の5月中旬の入試結果発表時と比すと、この時点で、10-15%の減少になります。また、TNIの単位認定基準は高く、特に1年次から2年次に上がる時に10-20%の落伍者があり、さらに通常の学部4年、修士2年を超えて卒業する学生も少なくないと言えます。また学部段階で、日本への短長期留学が多く、必然的に4年で単位取得が終わらない例もあります。また逆に最短で、夏休み時に学習し、3年半で単位取得する場合もあります。
  • 2015年の卒業生の多い学科順位:①日本語・経営学(BJ)153人、②マルチメディア技術学(MT)78人、③工業経営学(IM)75人、④国際経営学(IB)73人、⑤自動車工学(AE)68人、⑥情報技術学(IT)54人。
  • 過去6年(2010-2015年)の教育年度累計で卒業生の多い学科順位:①日本語・経営学(BJ)756人、②工業経営学(IM)514人、③情報技術学(IT)508人、④自動車工学(AE)485人、⑤コンピュータ工学(CE)295人、⑥マルチメディア技術学(MT)227人。
  • 2015年度卒業生と累計卒業生を比較しながら見ると、日本語・経営学、工業経営学、マルチメディア技術学が上位に来ます。BJ(日本語・経営学)は、女子学生が多いことでも目立つ存在ですが、様々な業種で日本語の出来る人材が求められることに対応し、また合弁企業の会計、財務、人事、マーケティング、物流、国際ビジネス管理など、経営管理の最も共通した側面に焦点を当てた内容が人気を呼んでいると思われます。2012年から開始した英語教育に力を入れる国際経営学(IB)も人気のコースです。自動車工学は、タイの主要産業である自動車および自動車部品産業のニーズに応えるものです。さらに工学部では、2016年12月からAMEICC(日アセアン経済産業協力委員会)の支援を得て、日系企業協力で設計・開発や自動化による生産工程のカイゼンに焦点を当てています。残念ながら工学部では取得単位数が厳しく、卒業生数が減っている学科もあります。

 

筆者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

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