泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第67回『仕事からみたTNIの有益性と社会貢献評価』
タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では前号に引き続き、TNIの卒業生の評価を取り上げます。特に日系企業の皆さんに関心の強い次の5項目を取り上げます:①TNI生の将来の仕事の希望・計画、②TNI選択の理由、③仕事から見たTNI学習内容の有益性、④TNIが目指す社会貢献4主要点についての賛同、⑤TNI及び教職員への意見。
6. TNI生の将来の仕事の希望・計画
図6の通りで、専門知識を生かす仕事をしたいと受け取れます。タイでは一般的に起業家志望が多く、TNI生もこの特質が見られます。世界的なスタートアップブームで、日本よりも積極的に考える若者が多いように見えます。
TNI選択の理由
1)日本語・英語を学習できる、(2)卒業後の就職のしやすさ、(3)日本へ行ける機会、(4)TNI標語:「創造的思考力・実践力・発明工夫力・経営力を涵養」に共鳴、(5)専攻科目 (6)奨学金、(6)日本式やり方、(8)日本で働く機会、(8)住居に近い、(10)少人数クラス、(10)新しい大学。
仕事から見たTNIの学習内容の有益性
図7は、現在の仕事から見た5つの学習内容評価です。(1)日本語の使用については135人中98人(6%)、(2)英語の使用については132人(98.8%)、(3)言語・コミュニケーションの有用性については110人(81.5%)、(4)専攻内容の有用性については132人(98.8%)、(5)チームワーク、規律、カイゼン精神など、組織力の有益性については129人(95.6%)がそれぞれ評価しています。
なお日本については、88人(65.2%)が訪問しています。これまで10回以上訪問した者もいます。 なお近年では、卒業後日本で直接勤務するものが年に10人以上いるようです。
以下、キャリキュラムなどへの改善提案を列挙します:学生活動をより多く、積極的に。特に日本文化や日本の組織を知られる活動。修士コース増。学部増と駐車場増。エクセルコース。より実践的な内容。教員も新技術学習。カリキュラム開発。日本語・英語プレゼン能力改善、例えばインターンシップで日本語・英語でプレゼンするなど。新技術やマイクロソフト・オフィスの活用。資格が取れる機会増。
TNIが目指す社会貢献4主要点についての賛同
図8は、以下の4点について卒業生の賛否を問うた結果です。いずれも80%を超える賛成・期待の意見です。(1)学生の産業界就職と中核人材としての活躍88%:この点がTNIの強み。自動車・電子産業は、日本企業と強い結びつき。卒業して就職がしやすい。この強みを継続して欲しい。日本企業のみに焦点を当てないで。就職競争が厳しく、給与が下がる傾向で、もっと就職指導を。学生の競争能力強化。(2)TNIの研究・開発・技術革新努力を通してタイの産業力(技術力)向上95%:これは良い案。TNIで、ハイテク機械・設備やソフトに接し、会社の技術向上に役立つ。タイ産業貢献は良い。TNIがイノベーションに力を入れるのを知るのは良いこと。TNIの技術革新貢献についてまだ聞いたことがない。大学は創造、研究、革新に力を入れるべき。研究結果がTNI信頼に繋がればよい。(3)手本となる日本技術(日本の考え方を含む)の導入と普及81%:日本企業にとってまさに有益。TNIのものづくり教育のやり方を評価。職場にとって重要。理論と実践が組み合わさり、学生が働く際に役立つ。TNIは日本文化の特徴を持つと言う象徴的意味を持つ。世界の技術への手がかりになる。この点について余り勉強しなかった。新たなやり方、考えと思えない。日本文化はタイ文化に合わせるべき。(4)国際協力と貢献91%:学生には良い機会になり、外国で働きやすい。国際協力は日本だけでなく、あらゆる国に重要な経験になる。学生は、コミュニケーション、チームワーク、ビジョンが向上。大学の質、知名度向上に繋がる。日本だけの奨学金だけでなく、欧州協力も必要。
TNI及び教職員への意見
(1)TNIへ:もっと樹木と駐車場を。いす・机・壁・トイレなどの清潔維持。スポーツ大会などを促進し、学生の態度向上。食堂やキャンパススペース拡充。もっと社会活動に触れる機会。授業登録などの改善。毎月卒業生に校友会ニュースを。卒業生に大学発展についてコメントする機会。
(2)TNI教職員へ:新たな教授法やカリキュラム開発努力。利己主義(エゴ)を減らせ。アクションラーニング。卒業生への特別講座で先輩による仕事の成功経験などを話してもらう。学生の英語力向上策を。革新的な考えを持つための企業との協力。職員はもっとサービス精神を。教員も日系企業・産業での経験を。事例研究をもっと取り入れるべき。