泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第72回『日本の良い点と厳しい点』

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では前号に続き、日本で働くTNI卒業生を紹介します(調査の趣旨や全体的な印象などは前号をご参照ください)。なおTNIニュースレター14に、日本の大学院に進学する卒業生とともに、6社8人の働く卒業生を紹介しており、併せてご参照ください。掲載質問項目:氏名と愛称、1.個人ファイル:兄弟姉妹人数と何番目、出身地、TNI専攻科目と修了年月、タイ・日本でのインターンシップ、勤務先と職務内容。2.①TNI志望理由 ②なぜ日本に興味? ③日本在住年数 3.日本の仕事をどのように見つけたか? 4.日本の仕事・組織で良い点と厳しい点 5.日本の生活で良い点と厳しい点 6.日本機関・企業への提案 7.日本社会・日本人への提言 8.TNIと後輩学生への提案 9.日本での困難克服エピソードなど 10. 編者注。

4)ラヌラックさん(Mr.Lanurak Phongnumkul、ポップ)

  1. バンコク出身、PE(生産工学)を2014年3月修了。タイの日系企業で研修後、日本電気(NEC)でサプライチェーン全体を改革するためのシステムコンサルとSCMコンサルティング兼グローバルものづくり販売促進を担当。
  2. ①奨学金と日本語のカリキュラムの有無。②高校時代に参加した短期交換留学プログラムが素敵な経験であった。③既に4年在住。
  3. 学校(所属の奨学金プログラム)推薦。
  4. ほとんどの人は責任感が強く、きちんと自分の仕事をこなすため、一緒に働きやすい。一方、結論の出ない会議など、あまり意味の無い打ち合わせが多い。
  5. インフラが充実していて暮らしやすい。一方、物価が高いこと。屋台料理が無いこと。
  6. ①労働ビザ取得の困難さや、外国人が不利になる年金制度など、外国人にとっては良い条件と思えないものがまだ見受けられる。②タイ人は仕事を選ぶ際、収入や福利厚生、仕事のやり甲斐などだけではなく、居心地(人間関係)も非常に重要視するため、それが良くならない限りは人材の確保が難しいと思われる。
  7. ①高文脈文化と低文脈文化のことを理解して接していただいた方が、外国人従業員の方とよりうまくコミュニケーションでき、彼らの能力を発揮させられる。②相手にずっと一方的に連絡させずに、たまに自らも連絡をとることで、時間経過と共に疎遠になることを防ぐことができ、多くの大切な友達ができると思う。
  8. ①後輩へ:留学は様々な面で成長させてくれるので、ぜひチャンスを活用すべき!ただ、海外の生活は辛いこともあり、特に日本では人間関係で困っているタイ人を非常によく聞く。そんな時の問題解決の切り口は同じ状況、ことに遭っている仲間を探して愚痴を言い合って、ホッとするのではなく、先ずはその国の文化を心から受止めて理解することが重要。今までの自分の期待行動、先入観を捨てる。そうすれば、自分も楽になるし、より相手を理解できて良い関係を築けるはず。 ②TNIへ:日本人留学生を受入れる交換留学生プログラムは私の時代はまだ多くなく、でも、とても素晴らしく、多くの留学生と友達になり、かけがえのない思い出がたくさん出来た。私の日本語能力も大半そこから修得したものだと思っていて、とても感謝している。今後もゼヒもっともっとそのような接点を増やして、多くの学生さんに体験させて欲しい。
  9. 大阪大学大学院時代は当初、工学の専門用語もほとんど分からず、また自分の研究分野の専門知識もほぼゼロからスタートした状態で大変だった。私は最初は助けを求めずに自分でしっかり勉強し、研究進捗発表用資料を全部1回一人で書いてから、友達に見てもらうようにして克服。自分で資料を作成するには、まず情報を整理しなければならないため、理解がとても深まり、また、恥ずかしがらずに日本語を訂正してもらうことで、言葉の意味や正しい使い方もすぐ覚えるようになった。
  10. NECは、TNI生の日本インターン生受入れのパイオニア企業。研修後、就職した卒業生が数名いる。

 

5) ナッタリーさん(Ms.Nattaree Choochumsri、ジャー)

12人の兄、3番目。トラン (南部) 出身、PE(生産工学)を2016年4月修了。三翠社 (大阪) で研修後、同社に就職、 生産ラインの文書作成と輸出製品のチェックを担当。

2①高校の先生から日本に留学する機会があると聞き、TNIを選択。②日本に興味:日本の労働文化と日本食が好き。
③既に2年以上滞在。

3大阪府立大学交換留学+インターンシップ制度に参加、卒業後、同会社に就職。

4間違いをしないように仕事に多くの注意を払うので、他の国よりも結局は楽で、仕事の間違いが少なくて済む。厳しい点は、他の人と何か異なったことを言ったり考えたりすることができないこと。

5良い点:安全。6外面で人を判断しないで欲しい。7英語を恐れず話すべき。

8日本で働くことは、初めは、プレッシャーが多く、それで、強靭になる必要がある。

9日本でインターネットを持たずに道に迷い、人に尋ねて何とかなった。

10ナッタリーさんのほか、大阪府立大学、堺市および大阪府民間企業の協力で6カ月の留学・インターンシップを受け、就職している卒業生が数名いる。

6)ナッタチョクさん(Mr.Nattachok Tantivorathumrong、ティ)

12人(長男)、バンコク出身。AE(自動車工学)を2016年3月1日修了、日本で研修、 ヒラテ技研社でサポートエンジニア職。

2①自動車工学を学ぶためTNIを選択。 ②日本の車がとても好きで、子供の時から日本の車の会社で働きたいと思っていた。 ③既に日本に2年間ぐらい在住。

3TNIジョブフェアから今の会社を見つけた。4皆が真面目に仕事をしている。いいものを作るため、細かい所にも気を付けている。一方、日本で仕事する場合、日本語をうまく話せないと自分の意思を伝えられず、別のことになる時がよくある。

5仕事をしている時、例えば報・連・相のことなど人生の考え方も勉強になる。一方、タイより生活費が3倍ぐらい高いので、お金のことに気を付けないといけない。

6仕事をもっと分かりやすくするため、技術関係のことは資料化してほしい。新人は入社して仕事を理解するまで、先輩の後ろで仕事の仕方を覚えて本番の仕事に備えることがよくある。ただその先輩の後ろで勉強するより、資料を作って先輩が説明しながら、資料を読んだ方が効率が高いと思う。特に日本語がまだ慣れていない外国人に資料化すると、研修時間が少なくて済む。

7もっと外国人に声を掛けて欲しい。たまに寂しいと思うことがある。相手のことをもっと理解したくても、あまり、話せないので、何を考えているかが分からない。

8もしあなたが日本で働きたいなら、日本語も、いままで勉強したことも大切に!特に日本語ができないと、日本で生活するのはとても難しい。9. なし

101月に行われるTNIジョブフェアは100社以上が参加する就職・採用マッチングフェア。

編者 吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

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