タカハシ社長の南国奮闘録
第81話 セレンディピティとコミュニティ
毎月、日本で経営者仲間とフットサルをしている。目的は趣味の満喫、健康管理、そしてコミュニティづくりだ。大好きな趣味を通じてご縁がつながる。タイではゴルフのコミュニティも重要なビジネスマッチングの場だ。シングルプレイヤーだった父は、ゴルフの付き合いをとても大切にしていた。同じ趣味志向を持つ人と出会い、交流を深めてコミュニティを形成し、情報やパートナーシップを結びビジネスを構築する。人間社会ではとても大切なことだ。それがセレンディピティ(思いがけないものを偶然に発見すること)となり成功へと導いてくれたりする。
数年前、フットサルコミュニティで小林忠文氏に出会った。彼は20年前、19歳で単身メキシコに渡り、メキシコリーグのネサに入団。同リーグで3年間活躍し、目標を成し遂げて帰国した。本人は、その上の目標は立てていなかったため、それで満足してしまったと過去を振り返る。
目標やビジョンは明確にイメージできれば叶う可能性が高くなるが、そこに到達した後、次に何をどう描くかは人生の目的によって左右される。どうやら彼は違う目標を見つけたようで、その後は経営者の道を歩み始めることになる。
人は一定のレベルを経験すると、それを下回ることは自分の中で許せないように思えてくるものだ。帰国後、彼はサッカーを封印してしまう。しかし、経営者仲間で彼の尊敬する先輩からコミュニティを作ってほしいと依頼されたことがきっかけとなり、再びサッカーに携わるようになった。そこで私たちは出会うことになる。
テクニアのタイ工場を訪れ、タイに刺激を受けた彼は当地での起業を決意し、店を開いた。セレンディピティが舞い降りたのである。
小林社長は初対面の相手にも、自分を包み隠さず、恥ずかしいことでも面白おかしくさらけ出す。持って生まれたコミュニケーション能力といえよう。自分をさらけ出すのは簡単なことではない。それは素直になるということとは少し違う。人との出会いを大切にしてきた彼の人間力の表れであると私は思っている。
そんな彼のもとに、さらなるセレンディピティが起きた。タイでフットサルスクールを手がけようとしていた元プロフットサル選手の松山氏との出会いだ。サッカーコミニュティが2人を引き合わせたのである。
2人はタイで唯一のフットサルスクール『グラッドジョイ・フットサル・クラブ』を開校した。松山代表兼コーチの指導ポリシーは、上手くなるだけではなく、諦めないこと、スピリットを育てること、そしてフットサル以外の想いや信念、夢への部分で子供たちをサポートするということだ。
技術面ではフットサル特有のテクニックや判断力の向上を目指し、選手の個性を活かしながら出来るまで粘り強く指導を行う。達成できた時の喜びを共に感じ、共に成長するスクールを目指している。それにより選手の集中力や我慢強さが育つという。スクールのカテゴリーはU-6、U-8、U-10、U-12、レディース、成人男性まで多岐にわたる。
松山氏は2013年からFリーグのバサジィ大分に所属し、2015年からは副キャプテンを勤めた。そして2016-2017年、タイのフットサルリーグ『Department of Highways Futsal Club』に所属し、現在に至る。このように実戦豊富な経歴があるため、技術力もコーチングスキルも高い。
そんな松山選手から、テクニアのフットサルチームの運営について、選手の主体性に重きを置くことや、チームを思い仲間を思いやるコミュニティの大切さについてアドバイス頂いた。
世の中に必要となるセレンディピティは、思いや夢、志を同じくするコミュニティの中に起きうる必然的な出来事なのかもしれない。