タイ版 会計・税務・法務
第123回 タイにおける「外国人事業法改定(施行)」について
Q:改正外国人事業法が施行されたと聞きましたが、どのようなものでしょうか?
A: 先月号で、改定作業が進行しているとお伝えした外国人事業法ですが、今般正式に施行(2019年6月25日付)が発表になりましたので、今回はその内容を解説させていただきたいと思います。 まず、緩和の対象となる分野は前号でお伝えした以下の3分野で変更がありません。 ―関連会社に対する以下のサービス
1)タイ国内における貸付
2)建物・場所の賃貸業務
3)会社運営・総務・市場開拓・人事・ITに関する助言とアドバイスの実施 また、施行通達においては、上記の「関連会社」に関しても以下の通り明確化されました。
a)同じ株主が人数ベースで過半数を占めている会社群:例えば、会社甲の株主がA、B、Cの3名で、会社乙の株主がA、B、Dであった場合、株主A、Bは両方の会社で過半数の株主となっていますので、甲、乙は「関連会社」となります。
b)特定の株主が株式数で25%以上保有している会社群:例えば、株主Aが、会社甲、乙の両者に対して25%の株式を保有している場合、甲と乙間に直接の資本関係がなくとも「関連会社」となります。
c)25%以上の直接の資本関係がある会社:会社甲が会社乙の株式を直接25%以上保有している場合、甲乙は「関連会社」となります。ただし、これは親子関係のみであり、孫会社まで含まれない点注意が必要です
*例えば、甲が乙の株式を25%保有し、乙が丙の株式を25%保有している場合、甲と乙、乙と丙は、それぞれ「関連会社」となりますが、甲と丙は「関連会社」とはならず、親会社から孫会社(もしくはその反対)に対して直接上記のサービス提供はできないと考えられます
d)経営権限を持つ取締役(*)の過半数が共通する会社群:個人Aが権限取締役として、会社甲・乙を兼ねており、かつ、甲・乙の取締役数が1名の場合、甲・乙は「関連会社」と考えられます。
*権限取締役は「経営権限と持つ取締役」と基本的には考えられます
資本関係における経営権を規定したa、b、cのみならず、会社運営の面からも関連会社を規定している点(dのケース)、より関連会社の定義が広く、今回の緩和で外資企業、特にタイに複数のグループ会社を保有する企業が行える業務の範囲がかなり広まったのではないかと思われます。
なお、1)タイ国内の貸付業務に関しては、税法上の特定事業税の対象となるかと考えられますが、上記c)の25%資本関係の場合には特定事業税対象外取引となっております。
また、外資として上記業務を行うことは、外国人投資法上は可能ですが、それにともなう定款や税務登録の変更等の手続きが必要となる場合もあります。
いずれにせよ、BOIにおけるIBC制度の導入によるグループ間サービス規制強化に対応する緩和策としても有効な、利用価値のある緩和策であると考えます。
なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。
小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk
FNA月刊U-MACHINE 2019年8月号掲載