泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第92回 『新型コロナウイルスからの復活を期して』
タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では、いまパンデミックにある世界からの復活を願い、私のタイからの一時避難と、取り組み中の新たなTNI大学案内新版のご案内をさせていただきます。 ご承知のように新型コロナウイルスが猛威を振るっており、この原稿を書いている3月末から4月初めの時点では、タイでも非常事態が宣言され、スーパーなどでの食品や医療機関以外は基本的に閉鎖で、大学も例外ではありません。入出口は写真のように1つに限られ、学生は登校禁止、授業は遠隔事業です。また残念なのは、日本を含むインターンシップなどが相次いで中止になり実施できないことです。早い回復を願ってやみません。
コロナウイルスでTNIも閉鎖し、日本へ避難
私は非常事態宣言発令の3月26日バンコクから自宅に戻りました。お陰さまで近くの日本の春を愛でることが出来ましたが、やや安堵と共に後ろめたさを感じます。しかし仕事をするにも、はるかに良い環境になりました。同日零時に始まった、非常事態は、5.40amごろ、やや心配だったタクシーは難なく探せ、飛行場には30分で行けました。なおタクシー運転手も、この時点ではバンコクから地方に戻れないとのことでした。こうして、日本の自宅に無事帰るということなら偶然上手く行きましたが、さてバンコクに戻るとなると、いつ、どうやってという問題は依然としてあります。
2020年5月発行のTNI大学案内新版の学長メッセージ
以下は「ものづくり人材育成とタイ日共創プラットフォームの構築」というテーマで大学案内新版を紹介させていただく、バンディットTNI学長の冒頭メッセージです。ご期待ください。
⃝この小冊子は、主として日本人の方に、泰日工業大学(TNI)を理解していただく目的で、5つの部分に分け、特にタイの知識・経験が少ない方にも分かりやすく、タイ一般の状況とタイの大学全体を意識して紹介させていただきます。私がここで特に紹介させていただきたいのは標題の2点と、TNIの日本との関係です。
⃝ものづくり人材育成:TNI全学で取り組む主題であり、最近ではおもてなしなどを含むモノづくりとして、製造業だけでなく、情報技術産業、サービス業でも重要な考え方になっています。表紙に「5ゲン主義」を紹介しましたが、日本の環境にいない、タイの学生が問題を理解し対応することから、「3ゲン」だけでなく、「2ゲン」も重要ということで学生に指導しています。詳細は、第1章の教育方針をご参照ください。
⃝タイ日共創プラットフォーム構築:2019年タイ大学の所管官庁は、高等教育・科学・研究・イノベーション省になりました。特に少子高齢化で学生数縮小の中で、産業高度化とイノベーションを担う役割が増えています。TNIは、タイの大学の新たな環境と大きく関わっており、スタートアップ支援・研究開発協力などで日系企業と協力を深めさせていただきます(第3章ご参照)。
⃝TNIの日本との関係:TNIはこれまで日本の様々な機関から支援を受けてきました。タイでは盤谷日本人商工会議所を始め、在タイ日系企業から学生奨学金や機材などをご提供頂いています。さらに学生のインターンシップやワークショップ、就職などのご協力を頂いています。就職では、最近は日本からの直接採用が増えています。また多くの日本の教育・研究機関との提携で毎年200人を超える学生と教員を交換しています。この協力はTNIの研究・学術レベル向上のみならずタイの産業界の発展にも貢献します(第5章ご参照) 。
20年5月01日掲載