タイ版 会計・税務・法務
第134回 今回のテーマは、タイにおける新型コロナウィルス (COVID-19)と商務省関連手続きです。
Q:新型コロナウィルス(COVID-19)「以下新型コロナ」の影響について、会社運営手続きー特に商務省関連の手続きを教えてください。
A:タイでも新型コロナの影響は、会社の法務・登記手続き面で影響を与えています。特に紙媒体や、実際の会議を前提として規定されていた、取締役会や株主総会について、これを機会に電子化する動きも出てきていますので、以下タイで会社登記法務関連事項を取り扱う商務省から、これまで発表されている通達について概要を解説させていただきます。 まず、新型コロナの影響により定時株主総会を開催できなかった場合には、特に期限なく開催の延期が認められています。 これは、今回の新型コロナの影響を直接的に受けた会社への救済措置として、通常決算期末から四ヶ月後に開催されなければならない年次定例株主総会について、開催延期が期限なく認められています。ただし、この開催猶予については、以下のような留意点があります。 ①理由としては新型ウィルスの影響で株主総会が開催できなかったということが必要です。単純な決算作業の遅れ等は理由としては認められておりません。②株主総会が開催されたのち、商務省に対して開催が新型コロナの影響により遅延した旨の理由を明確に記載した文書を提出しなければなりません。③この文書の雛形は商務省で公開されておりますが、これを商務省に電子的もしくは郵送で提出します。 一方で次に解説させていただく、取締役会/株主総会の電子媒体手段による開催が可能となっており、電子媒体を使っての開催ができる状態となっている場合も多いかと思いますので、延期が制度的には認められているとはいえ、早期の定時株主総会開催をお勧めします。 次に、取締役会/株主総会に関して、電子媒体による会議の開催が認められる通達が出されました。 これまでタイの制度では、電話・テレビ会議での会議については、出席者がタイ国内にいることや、定足数の1/3が(電子媒体経由でなく)実際の会議に出席していること等の制限がありましたが、そうした制限が取り除かれ以下の条件を充足することにより、電子媒体による会の開催が可能になりました。
1.会議の運営や決議等の進行は、実際の会議と同様に法律に沿って行われること。
2.使用するテレビ会議システムが、デジタル社会経済省規定の「電子会議におけるセキュリティ基準(2014年)」に準拠していること
3.書面での議事録の作成
4.会議中の音声(及び映像)、参加者のログデータの電磁的記録を行う
このうち、2.のセキュリティ基準合致がやや気になるところではありますが、基本的には3.4.の項目が適切に作成・管理できていれば、電子媒体での開催については問題ないと考えられています。 なお、この通達に関連して、株主総会の通知に関する改定(特に現在は新聞公告が必要になっている点)についても検討されているようであり、また別途お知らせさせていただきます。
※前稿で解説させていただいた個人情報保護法については、2021年5月まで施行が延期されております。
小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
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20年7月1日掲載