泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第95回 『TNI卒業生の活躍状況』
タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では、日系企業で活躍する卒業生というテーマでMurakami Corporation (Thailand) Ltd.の中澤佳丈副社長に日系企業勉強会(Jセミナー)でプレゼンして頂いた内容を要約・紹介させていただきます。同社では卒業生が就職でお世話になるほか、「TNIものづくりエンジニアプログラム」でも設計開発や生産工程の自働化のワークショップなどのご協力を頂いています。
編者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問
1. MCT本社の会社概要
•本社:村上開明堂 (静岡県静岡市)
•創業:1882年 資本金:31億円
•事業: ①ミラーシステム:ドアミラー・インナーミラー等の設計・製造・販売②オプトロニクス:光学薄膜製品等の設計・製造・販売
•売上高: 737億円(連結 2019年3月期)
•従業員数: 2,949名(連結 2019年3月31日)
•海外拠点は、図の通り。タイは4社ある。
2.MCT会社概要
•所在地:バンコク クロントエイ区CTI Tower20階
•設立: 2013年
•株主構成: 村上開明堂の100%子会社
•事業:①ASEAN統括、②設計:ドアミラー・インナーミラー、③ サポート:営業、調達、生産準備(ASEAN各社)
•従業員数:24名
•MCTとアセアン関係会社:図を参照
3.MCT設計業務の現地化
•設立翌年の2014年から人材採用・登用してきた。
•設計・図面作成はタイ人を育成し、コンピュータ/3Dデータ・カティアを使う。ルーティーンのモデリングの第1段階から設計検討業務の比率を高め10の段階へと育てる計画。
•そして、ものづくり工場として全てのアセアンでカバーできるよう、いかに早く設計者を育て、設計精度をあげるかに努力してきた。
4.設計者育成状況
図の5段階レベルで5年後に一人前になることを目標にしている。第1のモデラー段階では、キャティアを使うが、第2の日本のMCJへ出向を経て、仕事の範囲を広げ、強度解析などのソフトウエア力を向上し、現2019年11月時点の客先出向の段階に来ている。
5.TNI生への期待
1)TNI卒生の採用状況 全14人のエンジニアの1/3は、TNI卒業生で、今5人いる。またTNI卒業生は2016年度から、4年連続の日本派遣実績で、日本についての意識・日本語などの良い意味の影響がある。
2)MCT社での活躍状況 「来年日本に」と問いかけると、TNI出身者が日本出向に積極的。そして帰国後は、この図にあるように、貴重な役割をしてくれている。ウエブ会議でも両者のパイプ役で、将来の幹部が期待される。
3)身につけてほしいこと(育成方針から) 「期待」のキーワードをここに提示。特に自分の仕事のみの状態から、関係会社のサポートへの観点で、図の3点を期待している。
4)重要視したいこと
①ロジカルに上司・部下に話す。
②責任ある行動を。
③設計は図面30%、他は70%の比率で、要するに「交渉」が重要になる。
④組織力で、チーム15人がリーダーのもと、バランスの取れた行動を要求される。
2020年8月1日掲載