泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第102回 『人材育成と産業サービス』
タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。昨年12月着任したクリサダー学長の本年から来年にかけてのTNIの事業と方針を紹介させていただきます。現在パンデミックで対面でない遠隔授業などを強いられている中で、タイトルのテーマに注力することになりますが、より日系企業の皆様と連絡させていただきたいと願っております。
編者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問
I. 泰日工業大学学長クリサダー・ヴィサワティーラノン(写真)から日本企業の方へのメッセージ
私が特に日本企業の方にお伝えしたいのは次の4点です。
1. TNIの設立目的など:TNI は、アジア・大洋州の生産拠点になりつつある、タイ国の産業発展に資する優秀な技術者・中核産業人材の育成、研究・学術サービスの発展と向上を目的に2007年に開学、2021年は15年目になります。卒業後の100%就職を支援する一方、最近では卒業生はタイのみならず、日本に150人以上が就職しています。
2. ものづくり人材育成:TNI 全学で取り組む主題であり、最近ではおもてなしなどを含む『モノづくり』として製造業だけでなく、情報技術産業、サービス業でも重要な考え方になっています。(*ここではものづくりとして表記します)。PBL(課題解決型学習)・カイゼン・チームワーク・イノベーション・コミュニケーションなど、ハードだけでなくソフトも重視します。ものづくりの考え方の一例として「5ゲン主義」(*図をご参照)がありますが、日本の環境にいない、タイの学生が問題を理解し対応することから、「3ゲン」だけでなく、「2ゲン」も重要ということで学生を指導しています。
3. タイ日共創プラットフォーム構築:タイ大学の所管官庁は、最近、高等教育科学研究イノベーション省(MHESI) になり、特に少子高齢化・学生数減少の中で、産業高度化とイノベーションを担う役割が増えています。TNI は、これに応えスタートアップ支援・研究開発協力などで日系企業と協力を深めさせていただきます。またタイの国家戦略タイランド4.0に基づいて、日本政府(経済産業省)のタイ版スマートものづくり応援隊スキームに参加、中小企業協力の一環として、現場カイゼンやIoT・ロボット導入指導が出来るインストラクター養成に励んでおります。
4. TNI の日本との関係:TNI はこれまで日本のさまざまな機関から支援を受けてきました。タイでは盤谷日本人商工会議所を始め、在タイ日系企業から学生奨学金や機材などをご提供いただいています。さらに学生のインターンシップやワークショップ、就職などのご協力をいただいています。就職では、最近は日本からの直接採用が増えています。また多くの日本の教育・研究機関との提携で毎年 200 人を超える学生と教員を交換しています。この協力は TNI の研究・学術レベル向上のみならずタイの産業界の発展にも貢献します。
II. TNI 2021-2022の主な事業と方針
1. 産業サービス:日系企業ニーズに応える学生育成のほか、以下を実施します。なお例えばものづくり研究センターで、年間7-8回実施のTPSコースで沢山の方にご参加いただいくなど、一部は、既に実施しています。また引き続きタイ理解や卒業生の日系企業就職事例講座(Jセミナー)も開催します。
•社会人教育: 短期訓練コース、非学位コース、生涯学習システム推進。
•オンラインまたはインターネット教育システムの有効活用。
•日本企業協力による研究開発プロジェクト推進。
•タイの中小企業へのコンサルティングサービス。
2. 新技術への注力:スマートものづくり、EV、ロボット、IT技術、AI、ビッグデータ。
3. TNI国際プログラムの推進:英語を媒介言語にして、日本・アジアの人が、いまの産業が必要としている工学、IT、およびBA(経営)専門課程を学べる教育を推進します。
4. TNI学生の日本語・英語・ITスキル向上:全学生必須の単位とし、基礎から上級レベルを学べるカリキュラムにします。
5. 学生・社会人参加者の拡充:詳細については『TNI大学案内 Guide to TNI』をご参照ください。なおインターンシップ、卒業生採用、奨学金、社会人講座など詳しくはメールでお問合せください。
2021年3月1日掲載