タイ版 会計・税務・法務
第143回 最終回にあたって
今回、FNA U-MACHINE様の誌面刷新に伴い、急ではありますがこの連載は本稿で最後となります。長い間、私の拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。最終回にあたっては、タイにおける経理・総務関係の問題に対する対処についての雑感を少し書かせていただければと思います。
まず、タイの制度(会計、税務、法律等)について、あまり「特殊だ」という先入観を持たず、問題が起こった際に「タイだから。。」という考え方を捨てることが大切なのではないかと思います。もっとも、日本の考え方が世界基準と異なっている(特に雇用慣行等)時もありますので、“特殊な”日本人の目からみると、相対的にタイはさらに異なっているように見える時もあります。 また、ネット等の情報では「タイはこんなに違う」という観点から書かれたものが多いこともあるでしょう(タイは「普通」というのでは記事になりませんから)。 では、どのように対処を考えれば良いでしょうか? 私は、まずは法律や規則、判例等の原典にどのように書かれているかに立ち戻るようにしています。いろいろ確認するときの順番としては、①原典(原則)、②専門家の意見、③経験者の意見という形で対応をしています。 これとは反対に、経験者の意見をまず聞かれるというケースをよく耳にします。必ずしも悪くはないのですが、経験者の意見を聞くときには、しっかりとした原典や専門家の意見がベースになっているかを確認することが大切ではないかと思います(これはタイ人の経理や総務担当の方が、以前○○したことがある、ということも含まれます)。 これは経験者の意見が間違っているというわけではなく、その意見のもとになっている経験が「普遍的なもの」なのかどうか、つまりいつでも当てはまるのか、それとも「特定のケースのみ」なのか、判断をするのがなかなか難しいということにあります。 もっとも、原典にあたって対処するには、1)言葉の問題、2)理解力/適応力/経験の問題があります。まず、言葉の問題についてですが、タイ語で原典を理解するのはかなり困難でありあまり現実的でないものの、幸いタイの場合には、英語訳や日本語訳、およびそうした原典を解説した資料が多く入手可能です。 実際の場合に、より問題となるのは、日本人マネージメントの方がこれまでにそうした事態の対処の経験をしたことがないために、原典にあたったり専門家の意見を確認したりしても、なかなか実際の場面に当てはめることが出来ないということがあるかと思います。 特に日本では営業や製造の現場で活躍されていた方が、タイで経理や総務関係の問題に対処することは、非常に困難が伴うのではないかと思います。この点について、これからは出来る限り本社の部署(財務・経理・総務・人事)が、海外拠点支援を「海外拠点の立場にたって」サポートを行い、問題発生の際には海外拠点の日本人マネージメントの方と共にその部署での経験を生かして対処するという体制を作っていくべきであり、そのような形がもっと広まっていくと良いのではと思います。 なお、このコラムは今回終了となりますが、最新のタイの情報については本ページ下段の弊社ホームページで更新しておりますので、よろしければアクセスいただければ幸いです。 改めて、長い間ありがとうございました。
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21年04月01日掲載