タイ版 会計・税務・法務

【第78回】 財務諸表の商務省への提出

Q:商務省への財務諸表の提出方法が改定されたと聞きましたが、どのようなものでしょうか?

A:はい、大きな意味では、商務省の財務諸表の電子データベース化をより進めるための処置の一環ともいえるもので、企業が商務省に財務諸表を提出する際に、電子データでの提出(e-filing)が今後必須となってきます。

 

これまでもタイにおいては、商務省に提出された財務諸表はデータベースで公開がされており、簡単な方法で財務諸表を入手することは可能でしたが、一方で、もともと紙ベースで提出された財務諸表をデータベースに取り込むために、最新のものが入手しにくい場合があるなどの問題点もありました。

さて、この新しいe-filingは、2016年からの施行となりますが、企業はまずは商務省からユーザーネームとパスワードを取得する必要が有ります(*2016年分については9月30日で一旦当該手続きは締め切られています)。このユーザーネームとパスワードの取得については、e-filingを行うことに関する取締役会議事録を作成すると共に所定の申込書に記入の上、代表者、依頼人の身分証明書と共に、商務省に登録申請を行うことになります(なお、弁護士、会計事務所等の代理人が申請を行う場合には、代理人への委任状も必要となります)。その後、企業は、このユーザーネームとパスワードを使って、商務省のデータベースに直接アクセスを行って財務諸表を提出することになります。

上述のとおり、この手続きは2016年からの実施となりますが、2016年中においては、これまでのように紙ベースでの財務諸表の提出も商務省は受け付けております。ただし、企業はユーザーネームとパスワードを取得の上、紙ベースでの提出を行ったのち、30日以内にe-filingを行わなければなりません。

たとえば、決算が2015年12月31日の企業ですと、商務省への財務諸表提出期限は2016年5月31日となり、それまでに紙ベースで財務諸表を提出すると共に、2016年6月30日までに、e-filingを利用して財務諸表を提出する必要があります。

なお商務省は2016年中にすべての企業がユーザーネームとパスワードを取得して、2017年からは完全にe-filingに移行することを求めていますので、注意が必要です。また、これから新しく会社を設立する場合等においても、e-filingへの対応が求められてくる点も留意する必要があるでしょう。

 

今後取り上げてほしいというようなテーマがございましたら、参考にさせて頂きたく存じますので、下記のEmail宛にご連絡頂戴できますと幸いです。

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

 

著者プロフィール

小出 達也 (Tatsuya Koide)

Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク ディレクター

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th

ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk 

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