タカハシ社長の南国奮闘録

第69話 日本人の役割

最近、現地採用者が増えてきている。様々な事情で帰任を諦め、タイに残る人も増えている。エンジニアや設計者、プログラマー、オペレーターに自動車ラインの品質管理など、タイ現地での経験者は引く手あまただろう。

駐在員の任期は各企業によって異なり、その人の置かれた環境によっても違う。ローテーションも大切だが、固定化もありかもしれない。

独身者、既婚者、子供の年齢、教育方針など様々な条件のもと、本人の意向、会社の規定、人事部の調整が必要になる。ただ、それは本社や母体が日本にある会社に限った話である。タイに本社機能があり、日本に会社がない場合は赴任という言葉は当てはまらない。

タイで起業して、タイで成長している企業も少なくない。IT系など、最近は若手の起業家も増加傾向にあり、離職して現地にとどまる人の数も年々増えている。まさに骨をうずめる覚悟だ。

タイは過ごしやすく、これからもどんどん経済発展する国であり、需要をしっかり捉えれば日本よりもチャンスがある。悪い悪いといわれる昨今の景気も、まだまだ成熟するまでに何十年も要するはずだ。たとえさらに悪くなったとしても一時期の話だ。タイは物価が安く、気候も人柄も治安もある程度いい。タイで生活できる仕事を見つけたら、人生の大半をタイで過ごすという選択もありだと思う。

ある先輩から、事業は軌道に乗るにつれ、必要となる能力や人間関係が変わってくるから、企業を成長させるなら赴任者の成長スピードに合わせるか、リリーフの時期が鍵になると教わった。リリーフは人材不足の日本から引き抜いてくるより、現地採用の枠を今以上に広げていくほうが将来にわたり正解になるかもしれない。

テクニアにおいても立ち上げ当初のメンバーはすでにいない。今後、会社を強化していくには社内教育と人の採用がとても重要になってくる。タイ人の教育に全力を注いでいくとともに、日本人スタッフの配置や役割をシフトしていかなければならないと感じている。弊社は日本人とタイ人との融合によって成り立っており、どこまで行っても日本人の持つ役割は大きい。

例えば飲食店で、日本人の板前さんや料理人マネージャーがいなくなると、味の変化はすぐにわかる。そうなった店にはタイ人も入らなくなる。

天の時、地の利、人の縁が揃って初めて今まで以上のパフォーマンスが期待できる。テクニアでは、お客様の要望以上の秘策を考案している。それが稼働する日が今から待ち遠しい。

高橋 弘茂
名古屋市中川区の精密加工部品メーカー『TEKNIA』の4代目。1969年愛知県生まれ。1989年に同社の前身『高橋兄弟鉄工所』に見習い入社。現場経験を積んだ後、『Yamazaki machinery UK ltd』などを経て2001年8月『タカハシテクニア』代表取締役就任。現在はVITPROJECT (THAILAND) アドバイザーを勤めるほか、マネジ個性学コンサルタント(セミナー開催)なども手掛ける。
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