アジア初の超硬合金開発メーカー トータルでのツール・マネジメントを
ダイヤモンドの硬度に匹敵し、金属加工に欠かすことのできない超硬合金。この開発をアジアで初めて成功させた企業が福島県に本社を置く「株式会社タンガロイ」である。同社は「タンガロイ」という広辞苑にも載る企業であり、超硬合金を刃先として使用する切削工具を生産、さらには切削ソリューション事業などへと順次ウイングを広げ、今では超硬切削工具市場で世界第2位の売上高を誇る企業集団「IMCグループ」の中核企業へと成長を遂げた。早くから世界展開に乗り出し、タイには1997年に現地法人を設立。その沿革と事業について、タイ法人「Tungaloy Cutting Tool (Thailand) Co., Ltd.」の佐藤英治Marketing Managerに話を聞いた。
東芝から独立しIMCグループへ
タンガロイ社の歴史は古く、昭和初期の1929年にまで遡る。当初は東京芝浦電気(現東芝)の事業部門にあった。戦後は独立採算の道を歩み、取り外しが簡単にできる刃先交換式工具の開発を行うなど、その技術力と開発力は確かなものとして高い評価を得てきた。 転機は2000年代に入って起こる。04年、経営陣と従業員による企業買収(MEBO)によって東芝から独立。現在の社名・体制となると、08年には超硬工具の国際的な切削工具企業集団「IMC(International Metalworking Companies B.V.)」入り。その狙いについて佐藤氏は「傘下企業同士の連携による技術面での相互サポート、さらには知的財産の管理などで製品開発に有利と判断したから」と説明する。 さらに、佐藤氏は、超硬素材開発で力のあるタンガロイ社が加わることで、「IMCにとってもメリットがあった」と語り、加盟15社の中でも同社が主要なポジションの一角を担う位置づけとなっている。
タイでドリルやエンドミル等を生産
タイ進出は1997年に発生したアジア通貨危機がきっかけとなった。それまでは特約代理店を通じて超硬工具等の製品を出荷していたが、エンドユーザーへの支援が急務となり、販社としての現地法人を設立。その後は日系企業の進出と相まって製造拠点を確保すると、現在の製販体制ができあがった。 東部チョンブリ県にあるアマタシティ・チョンブリ工業団地に工場を持ち、各ユーザーに対応した特殊品のドリル、エンドミルやリーマ、PCD工具にとどまらず、最近では刃先交換式工具などの製造を行っている。また、アフターフォロー強化の一環として工具類の再研磨も。特注品の相談から開発、試作、生産までを一貫して担い、顧客サポートに努めている。 タイという市場の特性から顧客は日系自動車部品メーカーが多いが、近年は欧米資本の企業やタイ・ローカル企業からの受注も伸びている。IMCグループ入りしてからは特に目立つようになったといい、世界市場を射程とした事業展開はタイでも確かな成果として結実している。
アプリケーション・サポートチーム
さらに最近は、タイ市場に製品を供給するだけに止まらないトータルとしてのツール・マネジメントにも力を入れるようになった。「もっと早く、もっと綺麗に、もっとコストを下げて切削を行いたい」という顧客の飽くなきニーズ。こうした要求に応えるためのさまざまな取り組みも始まっている。 その一つに設置後5年が経過したアプリケーション・サポートチームがある。一般のセールスチームとは別に、現場経験を積んだ選りすぐりのエンジニアを登用。特命を与え顧客の元へと向かわせる。何が原因か。どうすればもっと効率が上がるかなどを顧客とともに膝詰めで話し合い、提案・解決していくことを任務としている。 その際に役立つのもIMCのネットワークだ。加盟15社の中には、ニッチな加工などに強いパートナー企業やサテライト企業も複数存在する。「特殊技術を融通し合うことで、ビジネスにも広がりが出るようになった」と佐藤氏はグループ入りの効果をこうも説明した。
「見えないコスト」への追求
ツール・マネジメントでは、「見えないコスト」削減への追求にもこだわっている。ともすれば工具や工作機械の価格対応だけに目が向きがちなコストダウン。高速による安定した切削加工が実現できれば生産性がアップし、残業や休日出勤がなくなることも重要な要素と考える。さらにはロジスティックにかかる不要な時間も考慮に入れる。「生産にどれだけの時間がかかるかを把握し、そこから全体としてのツール・レイアウトを描いていく必要がある」と佐藤氏は考えている。 必要な工具などをタイムリーにお客様へ提供するためには、日ごろから機械メーカーや機械商社との付き合いも欠かせない。顧客から「この製品のコスト見直しを頼むよ」と事実上の丸投げを受けることも少なくない。そんな時にモノを言うのが、引き出しの多さ、ネットワークの広がりだ。単なる工具メーカーに止まらない、コーディネーターのような存在が高い支持を得ている。 目指す顧客サポートについては、「まだまだ不十分。手を広げる余地はある」と自省を込める佐藤氏だが、一方で「タイでここまでのサポート体制が行えるツールメーカーはないであろう」と自負も。この飽くなき向上心が、同社を現在の地位に押し上げているのだろう。目下のコロナ禍を「先が見えないトンネル」と表現するが、確かなレールはすでに引かれつつあるようだ。
2020年11月1日掲載
会社情報
会社名 | Tungaloy Cutting Tool (Thailand) Co.,Ltd. |
---|---|
住所 | 4th fl.,1858/5-7 Bangna,Bangna,Bangkok 10260 |
お問い合わせ先 | Tel : (66) 2 751 5711 Fax : (66) 2 751 5715 https://www.tungaloy.com |
担当者名 |