中国広東省東莞市に本社を置く「WELLMEIホールディングス」は、樹脂成形金型製造及び樹脂製品の受託製造などを柱とする中国大手企業。1988年に事業を立ち上げ、中国国内はもとよりタイやアメリカ、インドにも工場を設置。欧州や米州、日本などでも事業を展開する多国籍企業だ。タイには2015年、産業のグローバル化と顧客企業に対するアフターサービス強化を目的に進出。日系企業を顧客に金型の製造や受託生産を手掛けている。今後は、世界最大の中国市場を軸としたワールドワイドなネットワークをフル活用して、ワンランク上の品質とサービスを提供していく。

金型製造から射出成形までの一貫受注が可能

樹脂成形金型メーカーとして出発した同社グループだが、その金型製造で評価が高まると、自前で生産ラインを調達しない中小・小規模な部品メーカーなどから委託生産が舞い込むようになった。受注はさらに、樹脂製品への印刷やメッキ、蒸着、多層塗装、IML、IMR加工などより高次なものへと広がり、現在は金型製造から射出成形、最終表面処理まで一貫受注できる体制を整えている。 　人員約30人を擁するタイ工場は、多くのローカル向け新型製品のニーズに対応するため、19年に工場と人員を拡大。請負・受注先は、タイで主要な市場である車載部品、医療器具、OA部品、家電部品、食品市場など多岐にわたる。現在はすべての顧客が日系企業だ。

良品を安価で提供可能なサプライチェーン

同社グループの最大の強みは、有機的に結合された多国籍展開だ。中国金型メーカーの大手企業として、本国で自前のサプライチェーンを構築。品質の良いものを安価で提供できる体制を手中にしている。加えて製造の今後の要と位置づけるタイ工場には、日本語、タイ語、英語、中国語に精通したスタッフを常駐させ、顧客企業とのコミュニケーション構築に余念がない。 　微細な構造にまで高い精度が要求される金型製造において、顧客との膝詰めとも言える意見交換は欠かせない。即時対応、即時修正、日本市場よりも地理的に近い好条件も重なって、短納期も容易に実現が可能だ。積み重ねられてきた年間1,000件を超える多くの受注実績が、同社グループの信頼と品質・精度の高さを物語っている。

新GMは日本留学経験を持つ企業管理のスペシャリスト

海外最前線のタイ法人「WELLMEI (THAILAND) CO., LTD.」でGeneral Managerとして指揮を取るのは、中国山西省出身の董（トウ）菁菁さん。2020年2月に赴任した。コロナ禍の最中とあって当初は思ったように進まない営業展開に苦しんだものの、やがて口コミの広がりや飛び込み営業などが効果を上げ、日系社会にあっても注目の一社だ。物腰柔らかな30歳代の好青年。フレンドリーで明るい人柄も武器となっている。 　董さんは母国で大学を卒業後、日本の大学院に留学。企業管理や人事管理などを学修した。終了後の2010年から約10年間は日本の研究開発試作メーカーに就職。金型市場の最前線の近くにもいた。こうした豊富な経験を買われWELLMEIホールディングスからヘッドハンティング。流暢な日本語能力も評価されて、晴れて日系企業が集うタイ市場に派遣となった。 　山西省は中国北部、北京市の西方にある内陸地域だ。沿岸部に比べて経済発展は遅く、海外留学を試みる人材も当時は他の地域に比べて少なかった。2015年まで続いた一人っ子政策により、董さん自身も兄弟はいない。タイ派遣の打診に悩んだ董さんだったが、最終的に妻と子供を伴って赴任することを決めた。頼れるビジネスマンという一方で、家族思いな側面を合わせ持っている。

新たな市場の掘り起こしにも注力

タイ法人の今後の課題は、顧客の一層の掘り起こしだ。インジェクション精密金具の市場ニーズは従来の車載、電気電子などの業界以外にも着実に広がっており、これらの分野にどう浸透できるかにかかっている。例えば、タイではまだ知名度の足りない梱包市場などは、そうしたターゲットの一つとなる。董さんらはこうした未知の業界についても、一つ一つ足を運びながら自社製品の品質の高さを説明していく考えだ。 　また、現在では全てがその受注先となっている日系企業一辺倒の体制も、見直しを進めていきたいという。タイにも欧州やアメリカなどの企業が多数進出している。多国籍企業らしく、全方位営業を促進する意向だ。もちろん、タイローカル企業の地力も確実に高まっており、これらも当然にターゲットとなる。リスク分散、あるいはポートフォリオ構築の観点からも、国籍の垣根を超えた営業展開が必要となっている。

「美しさを一カ所に」

WELLMEIホールディングスの中国語表記は「汇美有限公司」。社名の「汇美」は、美しいものが一カ所に集まる」という意味。美しい製品、美しい人材、そして美しい顧客。企業価値を高め、今後の発展を支えてくれるこうしたさまざまな要素を一カ所に呼び集めたい。そんな意志が社名に込められている。 　タイ事業を統括する董さんは、この言葉に自社グループの今後の発展のカギがあると見ている。「一つだけが抜きん出ているだけではだめ。取引先、受託した仕事、社内の体制。全てが有機的に結合して、初めて最大効果を生むことができる」とも話す。その視線の先には、中国、タイ、そして日本、欧米などを結んだ壮大なネットワークが描かれている。

2021年5月5日掲載

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