泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第98回 『コロナ禍での学習』

今回は、これまでと少し離れ、私個人の学習に焦点を当てさせていただきます。たまたまタイの夏休みとCovid-19緊急事態宣言で一時帰国した筆者が、同宣言延長のもと、半年以上も日本にいることになり、職場に復帰できない状況と共に長距離遠隔勤務をどう活用するかの試行錯誤例です。やや個人の披瀝になりますが、参考にしていただければ幸いです。
筆者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

筆者のタイとの縁

私のタイとの縁は、相性が良かったことがあるかも知れませんが、縁があったとしか言いようがありません。これまで3回の長期滞在です。最初は1998年のアジア経済危機時で、AOTSバンコク事務所長としてアセアン3万人の復興支援に関わり、タイでは1000社12,600人の人材育成に協力。2回目は、同アジア代表として、アセアンやインド、中央アジア、イランなどをカバーして、工業省とアフリカ中小企業振興事例研修などに関わりました。3回目は、2011年から現在までのTNI勤務です。また、その前に日・タイ経済協力協会(JTECS)事務局長として、泰日経済技術振興協会(TPA)のタイ産業人材育成事業などを支援しました。また、AOTS入職の頃、のちのFTI(タイ工業連盟)の会長になったプラパットさんの研修をお世話するなど、タイとは少なからぬ縁がありました。

コロナ禍の6カ月の日本での過ごし方と学習

私の場合、タイ-日本という、かなり距離の離れた在宅勤務となり、ズーム会議を始め、次のように初めて勉強したことが多くなりました。最初はせいぜい1-2カ月と思っており、外出が制約され、メールやチームズなどで直接する仕事以外の、これまでの延長でない勉強を考え、計画的とは言えませんが、結果としては次の踏み台を模索できたと考えます(以下順不同です)。
・コロナ禍で人生を振り返り、離れて暮らしていた家族・親族のありがたみを認識:東京から30キロ圏の千葉ニュータウンの住居を離れておよそ30年近くになりますが、近所付き合い、ごみの分別処理、管理組合、自治会など、全て家内にやってもらってきたことに改めて気づきました。特に家庭菜園でモロヘイヤ、ルッコラなどを味あわさせてもらい、「バンコクで一人で仕事しているのではない」と、今更ながら、最終的に、この生活にどう復帰するか反省しています。
・朝1時間のストレッチと散策:スクワットや真向法と腰のひねりなどの体操をしたあと、4千歩から1万歩を目標に近隣の緑道などを歩きました。
・30年ぶりの日本の自然:3-4月は近くの池にオオハクチョウがいる風景を巡り、緑道を歩きました。知らない草木はグーグルレンズで名称を学びました。日本の春、梅雨、夏、初秋の気候は、厳しさのみならず、変化と風情を楽しむことができました。ウグイス、またツクツクボウシ・ミンミン蝉などの合唱、百日紅(サルスベリ)の花は最初は概して朱色ですが、だんだん桃色に変化していく様を学びました。
・日本の友人の重要性:健康・家族課題などを含め同世代の友の意見は大変貴重ですし、何よりも気の置けない仲間との歓談は大きな癒しになりました。
・グーグル写真で過去を振り返る:グーグルのフォトサービスは、印象に残るテーマのアルバム化や、関係者や関心事項の自動検索など、特にこの5年素晴らしいものがありますが、デジカメ以前の写真も電子ファイル化し、覚えていない写真の年月日をある程度適当に割り振り整理しました。断捨離・スペース節約はもちろん、こうして出来た画像情報は、当然ながら、文章を書く比ではなく、昔の自分と関係者を鮮明に思い出してくれます。ある意味では自分史だけでなく、家族、関係者とのその時の関わりを再現してくれます。
・読書で考え方を整理:今回は、自分の関心事項を広くし、勉強不足だった高校時代の基礎的なものや、宇宙、微積分、仏教、自律神経、禅と日本文化、宮本武蔵などを読みました。
・坐禅と日本のこころの源流を探る研究会:たまたま3月末の非常事態時に仕事の大先輩が代表である、「世界のための日本のこころセンター」の土居往夫さんにズームで誘っていただき、できない弟子として参加させていただきました。はやりの言葉で言えば自律神経向上にも役立っているし、日本の自然、神道・仏教・儒教が影響した日本のこころがこれからの世界に貢献するという勉強をさせていただきました。
・日タイ比較整理:宗教、言葉と文字、嗜好、交通、食生活、経済環境、家族意識、社会人基礎力、王室、政治、自然など、日常に直面する課題・テーマを二国間、時にはインドなどを含めた多国間で整理することができました。

2020年11月1日掲載

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