“抜型”は自動車、携帯電話、OA機器、パッケージなど様々な製品に使用される部品や部材をカットするために使用される。金型よりも安価で、さらに短納期で供給が可能。試作、量産問わず幅広く活用されている。この分野で、日本トップの顧客数を誇る企業が今回紹介するNODA(Thailand)Co.,Ltd. 。大阪に本社を置く「株式会社ノダ」(野田隆昌代表)は、海外進出を10年以上前にベトナムからスタート。日系の抜型メーカーでは唯一海外進出をしている。タイ法人NODA(Thailand)Co., Ltdは2012年末に設立した。代表者である野田匡直MDに話を聞いた。

独自路線で業界でも異端の成長

「当社は実父でもある先代が40年以上前に創業した抜型専門メーカーです。立ち上げ時は先代が一人で設計、製造を行う個人商店でした。そこに実兄である隆昌が加入、数年後自身も入社。23年前の話です」(野田MD)。20年前に先代が一線を退いた後は、隆昌氏が事業を継承。当初は大阪にのみ拠点を構える小さな家内事業であったが、職人気質の強い業界では珍しく営業部門を構え、顧客の声を製品に反映させるスタイルが評価されシェアは拡大。さらにより顧客に近い場所で抜型供給をと考え、愛知、埼玉、広島へ事業所を設立。この10数年間で業界トップクラスのメーカーに成長する事となる。

そしてさらなる成長を海外に求め、2008年にベトナムへ進出。海外展開の大きな理由の一つが「日本にいたままでは大きな成長は見込めない」(同)という危機意識だった。大手企業生産ラインの海外移管などにより縮小が進む日本市場。技術の革新は見込めても、将来的な市場の拡大には限界が見られた。「ならば日本で培った技術やノウハウを持って海外へ進出し、当地で市場開拓に乗り出した方が将来性はある」と判断。国内抜型メーカーでは初となる海外拠点を構えたのが、同じ東南アジアのベトナムだった。

紆余曲折ありながらもベトナム工場は順調に推移。海外でも顧客の支持を獲得し、「日本を離れても自分達のスタイルが通用すると確信できた」。そして近隣のタイにも大きな市場があることを知る。当時、タイは大洪水からの復興時期であり、自動車産業を中心に景気回復の最中。国内自動車生産台数も増え、輸出も拡大基調にあった。「ベトナム工場滞在時にタイへも既に営業活動を展開していました。元々東南アジアの中でも最大の日系企業進出国であり、一定の需要があることは見込めていた。次のグループのチャレンジとしてタイでの抜型提供を始めよう」。こうして始まったタイ事業。工場が本格稼働したのは2014年のことだった。

顧客の声を反映させたものづくり

同社では各種様々な抜型を揃える。ベニヤ板や樹脂板をレーザーカットし、切断溝に刃物が挿入された木型(トムソン、ビク型)。こちらは車輌内装材や機能部材加工、紙箱段ボールなどのパッケージ関連、詰め替えパックなどに代表される軟包材、トレーの外装カットなど幅広いジャンルで活用される。クロムダイ(薄型彫刻刃)は、シャープな切削性を誇り、樹脂、両面テープ、印刷ラベルなど、薄物素材の高精度な打ち抜き加工が実現可能である。

当初は集積する自動車産業を背景に、車輌関連部品向けの需要を見込んで営業を開始した。ところが、予想を超えて引き合いや需要があったのが、スマートフォンをはじめとする多機能端末やOA機器などの電子部品向け案件、エアコンやテレビといった各種家電製品にかかるニーズだった。現在この分野は自動車関連部品向けの受注と並び、同社の大きな収益の柱の一つとなっている。

「タイに進出する前にタイにある日系企業のお客様を訪問した際、現状の抜型に関してお客様が抱えられているストレスを沢山伺いました。日本の製品と比べて商品自体はそこまで悪くはないけど品質が高い物ではなく、品質管理や細部への気遣いなどしっかりと調整された抜型が提供されず、お客様が調整をされてから使用されていました。当社としてはお客様にそういった調整作業の負担を省いて頂けるように徹底した品質管理を心がけて製作しています。お客様に届いた時点ですぐに生産に入ることのできるものづくりは日系企業としての責務だと思う」と野田氏は説明する。

また、「お客様の加工される材料や使用頻度に合わせて適正な刃物や部材を選定することで抜き上がりや型の耐久性は一変します。お客様からご指示を受けるだけではなく、問題をお聞きした上でそのような選定をご提案する事はローカル企業ではあまりされていなかったことですので、こういったノウハウをお客様と共有し完成品の品質向上、生産性UPを一緒に実現していく。これが本来の抜型メーカーとしてのあり方だと思います」とも。品質、納期、価格、サービスと全ての面において顧客の声を製品に反映させる事で、タイ国内における日系抜型メーカーとしての地位を確かなものとしている。

 

職人の育成、ファミリーの輪を広げる

従来にはなかったこうしたハイレベルな技術力をタイで実現した背景に、同社が海外展開2年目から導入を進めた教育研修システムがある。現在拠点を構えるベトナム、タイ、フィリピンの3工場から、将来を嘱望された有能な若き現地技術者各2人の計6人を毎年日本に派遣。1年間の技術研修を受ける仕組みだ。大阪、愛知、埼玉、広島の4カ所にある同社工場最先端の現場で、指導員である日本人技術者から技術の習得と職人としての心得を学んでいる。

学習しているのは単なる小手先のノウハウだけに止まらない。精密な抜型の製造に臨む時の姿勢やノダイズムとも言える顧客第一の社風、さまざまな技術のツボなど、モノづくりの基礎から応用、発展まで一通りの習得に努めている。そして「一人前になって戻ってきた技術者が、共にタイの現場で働く後輩を技術だけではなくイズムの指導を行う事で、組織作りの好循環の輪が広がるようになった」と野田氏は目を細める。繰り返される技術、イズムの伝承が同社の力の源泉だ。

人材交流は日本側とのみではなく、ベトナム、タイ、フィリピンの海外拠点間でも行われている。管理者同士、技術者同士、言葉や文化の違いはあっても相互に人員を派遣し合い、交流を続ける中で生まれる競争意識と連帯意識。「自分も海外で生活する事で刺激を受け成長できた部分がたくさんありました。海外のスタッフにも同じような経験をしてもらい、大いに成長してもらいたい」。各拠点のものづくりや顧客に対する思いが歯車のように噛み合った時、新たな技術の進歩と事業の発展が期待できるとしている。

今後の展望、日本代表として

同社もタイ国内の抜型市場において競争の渦中にある。「我々は後発のチャレンジ組。タイ一国で見た場合でも、タイローカルメーカーが市場に深く浸透しており、その存在は大きい」と野田氏。ただ、それは裏を返せば、入り込める余地がまだまだあることの証明でもある。

さらに昨今の国際情勢による市場環境の変動が、タイ国内の抜型市場にも少なからず影響を及ぼしている。「今まで以上に顧客のニーズに合わせた製品が要求されるようになる」と野田氏は語る。営業、製造含め全社一丸となり、顧客満足度を追及する事でノダブランドをより深くタイ国内に浸透させる。

「まずはタイ国内で我々のサービスを充実させる事が第一。年内には設備投資を行い、生産体制を拡大させる予定です。またインドネシアやミャンマー、インドなど近隣諸国からも引き合いを頂いており輸出も行っています。お困り事を抱えているお客様が多数いるのではないか。日系唯一の海外進出メーカーということはある意味日本代表だと思うので、しっかりとその責務を果たしたい」。

会社情報

会社名 NODA(THAILAND)CO., LTD.
住所 55/53 Moo15 Bangsaothong sub-District, Bangsaothong, District Samutprakarn 10570
お問い合わせ先 TEL : +66(0)2-182-5276 FAX : +66(0)2-182-5277 E-mail: noda-thailand@kigataya.com
担当者名 野田(Mr. Noda)  Mobile +66(0)81-732-7061
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