泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第46回 『経営学部日本語プレゼンコンテスト』 

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、経営学部が過去3年間行っている日本語プレゼンコンテストをご紹介します。PBL(課題解決型学習)という言葉は最近大学などで使われる人気の言葉ですが、この取り組みもその1つと言えます。「新商品企画提案」という課題に6カ月間チームで取り組み、最終的に残った10チームが日本語で発表して競い合いました。発表内容、説得力、質問に対する対応、プレゼンの工夫、言語表現能力、チームワークが評価ポイントです。各チーム10分発表の後、5分の活発な質疑応答を行いました。審査委員だった筆者も「分かりづらい、答えにくい意地悪質問」をしました。3年前の第1回は、ただ原稿を読んでいた発表者が多く、第2回は質問に答えられないチームもありましたが、今回はたまに言葉に詰まるチームはあっても、活発、ユーモアある質疑応答が見られました。

第3回BJ(日本語・経営学専攻)学生日本語プレゼン大会骨子

 

  1. 日時・場所:2016年2月10日(水)45-17.00 TNI/A棟601号室
  2. 趣旨:3年目に入った経営学部の一大行事で、日本語上達、プレゼン能力向上を兼ね、ビジネスの重要テーマについて疑似体験をする。
  3. 競技内容:10チーム(46人。うち37%が3年生)が各10分の発表と、5分の他の学生と審査員の質問に答える。
  4. 聴取者:JPN408(学科単位名)を履修中の学生全員および他学年・学科の希望者
  5. 主題:新商品の企画と提案
  6. 場面設定:ある会社の新商品企画担当チームが経営陣(=経営学部長他の4人の審査員)に、主にパワーポイントや動画を使い日本語で企画提案を行う。
  7. 司会進行:3人(経営学部3年生)
  8. 審査基準:
    1)項目:発表内容・説得力・質問に対する対応・プレゼンの工夫・言語表現能力(ジェスチャー等も含む)・チームワーク
    2)配点:総合点:50点=(内訳:)内容10点+説得力10点+プレゼンの工夫(スライド・モデルの提示等)10点+質問に対する対応10点+言語表現能力5点+チームワーク5点→審査員4人の総合計で順位を決定する。
    3)表彰:1位最優秀賞、2位優秀賞、3位優秀賞、4位‐6位入賞、その他=参加賞

参加チーム名と新商品の特徴、アイデア、商品名、順位など

  1. ビクトリア社:犬の糞などを掃除するロボット=ハナちゃん。屋外での散歩時や室内での掃除、雨の日・雪の日でも使える。金額1~5万バーツなど。
  2. ラプター社:健康管理するスマート・ウォッチ=ラプター。時計で健康管理、5種類の機能。骨密度とカルシウム、筋肉バランス、青年から老人まで対象。25,000バーツ、保証期間の質問。
  3. ハッピーふとん社:熱帯地でキャンプするための多機能マット=クールクール(4位)。エアコン、電気代が高いのに対応した省エネ型で冷房・カビ対応・洗濯しやすさなどの5機能、くるくるまく布団、GPS対応など。
  4. ニュージェン文具社:スケジュール管理のための新世代スマートカレンダー=彼です/彼女です(4位)。デスクに置くタブレット型カレンダーでスケジュール管理。専用ペン、アラート警告など、3,939バーツ。
  5. サイアムプロダクツ社:臭い玉(膿栓=口臭の元)を取るコンパクトで安全な道具:クリーンメン・バスター(3位)。気になる口の臭いに対応、一般に1回3万バーツ治療の高価に比して、綿棒=シリコンスプーン・ライト・ふたなどがついた1,500バーツで15歳以上が対象。
  6. マルマン社:人を癒して交流する縫いぐるみトトロ:マッチー(2位)。フアフアふんわりした縫いぐるみ模様で、会話、暑さ・寒さ対応、センサーカメラの安全管理、マッサージ、歌と踊りの5機能を持つロボット。子供から老人まで対応し、価格は3000‐105,000バーツ。言語の質問。
  7. 光明社:所有者の好みの色に合わせてカメレオンのように車の色が変わる:マジック塗料。温度や太陽光で車の色を変える、リモコン対応。14,000~20,000バーツ。
  8. ただ今産業社:携帯電話を落とした場所を知らせるプラスチックゴムステッカー:アミちゃん(6位)。GPS装備のチップ・ステッカー、若い女性向きで300円。
  9. 将龍社:盲人の音声装置メガネ:イルキャン(1位、最優秀賞)。骨伝導の音波を使ったメガネ、30,000バーツ誠社:多機能テーブルやコントロールパネルに取り付けられた最新鋭のTV会議設備:Eアーチャリア。4人の会議に最適で、何でも対応できる多機能会議室、50万バーツ。

主任指導の亀島啓喜講師:この最終発表会には、10チームが参加したが、最初は23チーム約100人の学生が参加。23チームから10チームが選ばれた最重要基準は創造力とチームワークで、もちろん、グループによっては、ほかの優れた点もあり、また創造力あふれる企画であった。ただチームワークが上位10チームに比べると落ちていた。上位チームは、メンバーの何人かは語彙力が限られている者がいたが、全員が頑張って素晴らしい発表になっていた。

23チームは少なくとも3回の準備会合を持つ一方、選ばれた10チームは10回以上の打ち合わせ、リハーサルなどを行っていた。これらの努力が彼らの語彙を広げ、またコミュニケーション能力を高めた。また6カ月間という長い努力の結果の達成感を得たと確信。この発表会に備え、特にJPN408受講の学生には、できるだけ多くの質疑応答の機会を設けた。今年の質問者は21人の学生で、25の質問をした。来年はさらに機会を与え、表現力を向上させたいと思っている。

筆者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

 

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