タイ版 会計・税務・法務
第127回 「VAT-リバースチャージ方式」についてです。
Q: 弊社は今回、親会社に対してロイヤルティを支払うことになったのですが、付加価値税(VAT)をリバースチャージ方式で支払わなければならないと聞きました。これはどういうことでしょうか? A: タイにおいては、物やサービスの取引に対して現行7%の付加価値税(Value Added Tax)が広く課せられています。ちなみにこの税率は、本来は10%であるものの7%への減税が毎年行われており、今年の10月1日から来年の9月30日まで、引き続き7%が維持されることが公示されています。 VATは普段よく目にするのは物品を購入した場合に課せられているものですが、物品以外にサービスに関する取引についても課税がされます。 このサービスに関する取引については、タイ国内において行われたa) サービスの提供と、b) サービスの国外からの輸入という大きく分けて2つの課税対象取引があります。単純化しますと、a)は、提供と利用が国内で行われるもので、b)は提供が海外から行われるものの利用は国内で行われるもの(これは“サービスの輸入”と呼ばれています)です。 なお、b)の反対の概念として“サービスの輸出”、いわゆる提供が国内で行われるものの利用が海外の場合には“サービスの輸出”となり、これはVAT0レート取引として取り扱われます(この0レート取引は、VAT非課税取引とは異なり、対応する仕入VATを還付請求することが可能です)。 通常の国内取引であれば、サービスの提供者が利用者に対して請求を行う際にVATを加算して請求し、利用者から受け取った分を毎月申告納税することで、納付が完了します。 一方、サービスの提供者が海外にいるb)の場合はどうなるでしょうか? b)は海外のためタイにおける法人登記やVAT登録は行っておらず、国内取引のようにVATを利用者に対して請求してタイの税務署に納税することができません。例えば、タイ国内で使用する機械を一旦日本に戻して修理したのち、再度タイに戻す場合の修理代金の日本からの請求が該当します。この場合、日本で修理を行った会社はタイのVATを請求することはありません。 こういう場合に、物品の輸入VATと同じ考えで輸入者(サービスの場合はサービスの利用者)が、VATを支払う方法がいわゆるリバースチャージ方式と言われており、タイの利用者はサービスの代金を国外提供者に払うとともに、VATをタイの税務署に納税をします。 例えばサービスの提供の代金が100であった場合、100を提供者に払い、PP36の申告書フォームを利用して、7を税務署に納税します。通常のVATとは異なり、代金の支払う者が納税を行わなければならない点に、ご注意ください。 ロイヤルティの支払いについてVATがかかるという点についてですが、これはロイヤルティは「海外から提供を受けて、タイで利用する権利の対価」と解釈され、上述の「サービスの輸入」に該当するとされているためです。 ロイヤルティについては、源泉徴収税について関心がいくことが多いですが、支払いを行う際のリバースチャージ方式でのVAT納税も必要になる点、ご留意ください。
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小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
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2019年12月1日掲載