タイ版 会計・税務・法務

第141回 今回のテーマは、「新年会・クリスマスパーティー等に 関する税金の取り扱いについて」です。

Q:弊社では、毎年従業員のために新年会を行なっているのですが、この費用は会社が負担しています。こうした費用に関する税金の取り扱いを教えてください。

A:多くの会社において会社が費用負担する形で新年会や忘年会・クリスマスパーティーを行われていると思いますが、今回はこうした費用を会社負担とする場合の税務上の3つの論点―①法人税における損金算入の可否、②VATの取り扱い、③個人所得税に算入されるべきか―について、少し解説させていただこうと思います。  まず①の法人税についてですが、税法の規定において損金算入不可とされているものの一つに「収益や事業と直接関係のない費用」があり、こうした会の開催費用は必ずしも生産や営業とは関係ないため、この規定に該当するかどうかということが問題となります。  この点、過去の税務署のルーリングにおいては、こういう会が年中行事として慣例になっており、かつ、福利厚生の一環として考えられるなら損金算入可能とされております。より具体的には、こうした会の開催が会社文書(就業規定等)で定められており、全従業員が同一条件で参加している場合には可能との税務ルーリングも出ております。また、これは新年会等における従業員に対して配布する景品等についても同様の扱いとなっています。  次に、②のVATについて、まず費用支出に関する仕入れVAT(Input VAT)ですが、法人税と同じように「事業に直接関係のない支出に関する仕入れVAT」もしくは、「顧客接待等および同種の支出に関するVAT」は仕入れ税額控除をとることができないと税法で規定されています。こちらについても、法人税の損金算入可否と同じような税務ルーリングが出されており、法人税の場合と同じ条件のもとで、VATの仕入れ税額控除が可能となっております。  これは従業員に配布する景品の購入費用に関するVATも同じなのですが、一点注意しなければならないのは、税務署の通達では従業員への景品の配布は、いわゆる物品の「無償譲渡」にあたり、会社は売上VAT(景品購入価格の7%)を計上しなければならないとされている点です。VATにおける無償譲渡取引にあたるかどうかは、いろいろな通達・ルーリング等がありますが、この従業員への景品については、通達で例示されているため金額が大きい場合等は十分に注意することが必要です。  最後に③の従業員の個人所得税の論点ですが、これはこうした会の開催や景品の受領が「従業員の所得」あたるかという点です。これは会社から支給された一種の便益であることから、個人所得のいわゆる「雇用から生じる便益」として課税対象になるかどうかとことなのですが、これについても上述の法人税、VATと同じ、会社文書(就業規定等)で定められており、全従業員が同一条件で行われた会や配布された景品については、個人所得税に含めないとの解釈となっています。  新年会等や景品については、こうした解釈通達やルーリングがありますが、異なる福利厚生については異なる解釈がされていますので、会社の行事や福利厚生を行う場合には、税務上の取り扱いに十分にご注意ください。


小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. パートナー(ジャパンデスク)

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: JPD@mazars.co.th
ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk

2021年2月1日掲載

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