タイ鉄道新時代へ

【第88回(第4部4回)】 悲願の新線コーンケーン~ナコーンパノム線その4

21世紀最初のタイ国鉄新線となるコーンケーン~ナコーンパノム線は、今年1月初旬の閣議で土地収用が正式に承認された。これにより、起点となるコーンケーンからマハーサーラカーム、ローエット、ヤソートーン、ムクダハーン、ナコーンパノムに至るまで計6県の約1万7500ライ(約2800ヘクタール)の収用が動き出すことになった。対象は計7100区画、収用費用だけでも102億5500万バーツ(約350億円)を見込む。新設される全長355キロの複線鉄道は、第1工区(コーンケーン県バーンパイ郡~ローイエット県ノンポーク郡間約180キロ)と第2工区(ノンポーク郡~ナコーンパノム県間約175キロ)に分かれて工事が進むことになる。
(文と写真・小堀晋一)

東北部本線バーンパイ駅で分岐した鉄路は針路をほぼ真東に転じて、まずは最初の主要停車駅マハーサーラカームを目指す。ここまで約70キロ。ローイエットの衛星都市として栄えた1865年設置の人口100万人にも満たない田園都市だ。  主な産業は農業で、タイ米、モチ米、キャッサバ、サトウキビなどの生産が盛ん。キャッサバの根茎から抽出したタピオカデンプンは品質が良いことで知られ、精米業とともに当地の主要産業となっている。地下50メートルの地下には岩塩の層があり、かねてから製塩業も盛んだ。埋蔵量は7億トンほどと見られており、県内10数カ所の製塩工場で年間20~30万トンが生産され、首都バンコクなどに向けて出荷されている。  チー川沿いにある県庁所在地は、マハーサーラカーム大学を中心に街並みが整備されている。狭いエリアにいくつもの教育機関が存在し、この地域の教育行政の中核を担う。当時のラーマ4世がローイエット県から分離・独立させた後、バンコクの直轄地となった経緯からも国の支援を受けて成長してきた経緯が垣間見える。

東北部本線バーンパイ駅で分岐した鉄路は針路をほぼ真東に転じて、まずは最初の主要停車駅マハーサーラカームを目指す。ここまで約70キロ。ローイエットの衛星都市として栄えた1865年設置の人口100万人にも満たない田園都市だ。  主な産業は農業で、タイ米、モチ米、キャッサバ、サトウキビなどの生産が盛ん。キャッサバの根茎から抽出したタピオカデンプンは品質が良いことで知られ、精米業とともに当地の主要産業となっている。地下50メートルの地下には岩塩の層があり、かねてから製塩業も盛んだ。埋蔵量は7億トンほどと見られており、県内10数カ所の製塩工場で年間20~30万トンが生産され、首都バンコクなどに向けて出荷されている。  チー川沿いにある県庁所在地は、マハーサーラカーム大学を中心に街並みが整備されている。狭いエリアにいくつもの教育機関が存在し、この地域の教育行政の中核を担う。当時のラーマ4世がローイエット県から分離・独立させた後、バンコクの直轄地となった経緯からも国の支援を受けて成長してきた経緯が垣間見える。

ローイエットの名は、かつてこの地にあったサケートナコーンという街が11の衛星都市を持ち、そこに通じる城門が11あったことから。当時は、数字の「11」を表記するのに「10」と「1」と続けて「101」と書いていたことから、一続きの「101」すなわちタイ語で言う「ローイエット(101)」が土地の名となった。数字が都市名になるという奇妙な由来がここにはある。  県庁所在地中心部には、水上公園となるブンプラーンチャイ公園があり、市民の憩いの休息空間となっている。ここから同心円状に堀や道路が作られ、ローイエットの街が形成されている。航空写真からみれば一目瞭然だ。  同公園の南側には、昨年末に新規オープンした高さ101メートルのローイエットタワーが燦然と輝く。2017年から建築工事が行われていた。タイの民族楽器ウォートをイメージしたデザインの造りで、クラーローングハイ平原が360度見渡せる展望デッキを備える。レストランや美術館、仏像も設置されており、一日をここで過ごすことも可能だ。新たな観光スポットとして注目を集めている。  堀の内側と隣接地は住宅地や商業地が密集していることから、新線のレールと駅舎は比較的住宅等が少ない市街地北郊か南郊に建てられる公算が高い。ただ、北側には国道2044号線沿いに2100メートルの滑走路を持つローイエット空港がほぼ南北方向に向かってあることから、これを避ける造りとなることは確実だ。ルートによっては商流や人の流れが変わる可能性もある。(つづく)

 

21年04月01日掲載

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