タカハシ社長の南国奮闘録
第114話 未来創造企業
今年3月に経営実践研究会に入会した。経営実践研究会とは、法人企業が会社のあり方や存在感を学び、実践し、人材育成を行い、企業経営を研究する会だ。そこで学んだことは、人生において自分のあり方を大きく変えるきっかけとなった。
以前は、会社が上場すれば社員が幸せになると思っていた。上場企業で社員を幸せにしている会社はいっぱいある。しかし、自分の目指している幸福感はそこには無いと思った。中小企業は社員のために会社がある。しかし上場すると株主のための会社になる可能性が高い。社員を幸せにしたくて社長業をしているのだから、どんなに苦しくても社員のための中小企業のあり方を模索していくことを心に決めた。
世の中は今、大きく変わり始めている。10年先には60%の業種がなくなり、新たな業態に変わると言われている。現に1983年にピークだった町工場の数は現在3分の1になり、新たな起業や事業承継よりも廃業のほうが圧倒的に多い。
ものづくりは必ず残る。しかし会社を残すためには、乗り越えなければならないハードルがたくさんある。
もう一つの大きな気づきは、製造業の持続可能性を妨げる社会課題だ。その一つは間違いなく技能伝承である。テクニアは早くからその課題に取り組み、テクニアカレッジ技能伝承塾を運営してきた。しかし、技能伝承塾を全国に広めることは、なかなか上手くいかなかった。その理由は、価値の共有ができておらず、信頼関係が構築されていない中で商業的に物事を進めていたからだ。良いものであれば自然に広まると思っていたが、まずはそこに尽力できる人材と組織の力が必要だったのだ。
そのことに気づかせてもらった今、テクニアは信頼に値する企業になるために、未来創造企業を目指すことにした。未来創造企業とは、持続可能な未来を目指す企業の認定制度で、そこで認定を受けると、決算書や試算表とは別の価値基準での評価が得られる。テクニアは今後、未来創造企業となり、昨今社会課題になっている養護施設や障害を持つ子供たち、何かの理由で働くきっかけを失っている人たちにものづくりの楽しさを伝え、即戦力で働けるスキルを身につけてもらうための体制づくりをしていく。そして職人が共有できる環境を整え、我が社で働く全ての人にとって居心地の良い職場にしていきたいと思う。
そんな志を発信していたら、巡り巡ってより活動しやすい場を提供してもらえた。「ものづくり産業研究委員会」委員長の拝命だ。この委員会は、同じような悩みを抱えた会社の人たちが繋がり、共に研究し、問題の解決法を考える会だ。仲間の会社が職人不足になれば、ヘルプとして助けに行ったり、仕事中のトラブルを共有したりして、仲間全体で考え解決に導けるような関係を築いていきたい。
課題は色々あるが、製造業の問題だけを解決してもあまり意味がない。社会の問題を解決することが、製造業にも良い風を吹かせ、日本の発展にもつながる。これからの社会を担う子供達のために、消えていく資本主義社会から、どの方向に向かっていけば良いのかを明確に見せられる経営者でありたい。
2021年9月1日掲載