タカハシ社長の南国奮闘録
第50話 タイから世界へ
最近、タイ人スタッフの移動が減ってきた。一部の人たちは未だに転職を繰り返しているが、12月のボーナスをもらって移動という人は少なくなった。といっても、終身雇用が浸透し始めたわけではない。転職先が減っていることに彼らが気づき始めたのだ。
国内向けの自動車販売の低迷も関係しているのだろう。その影響で設備工作機械の受発注も落ち込み、買い手市場になっている。中国の景気も陰りを見せている。さらに今年は自動車の転売規制期間が終わる。タイでは前インラック政権が自動車産業の振興を図るため、2011年から12年にかけて初回新車購入にかかる減税政策を実施した。この政策では自動車の転売を購入から5年間禁止とした。そして5年目の今年以降、これらの車が大量に中古車市場に流れ始める。これは脅威になるだろう。新車と中古車のバランスがどのくらいになるか分からないが、決して小さな数字ではあるまい。
しかし一方で、タイ経済は進化している。チョンブリ県にある日本食レストランはタイ人で連日満席、パタヤにもどんどん外資系飲食店が出店している。中国人向けの観光業は爆買爆食で潤っている。景気が悪化していると言われる中国だが、一部の富裕層だけでも億単位になるのでまだまだ期待できそうだ。
タイ経済は需要に応じてどんどん変化し、進化している。製造業においても、その変化進化が問われている。タイの製造業は、国内生産分だけではもはや景気回復が見込めないかもしれないという現状がある。新分野に移るか、海外へと受注の軸をシフトしている顧客についていかないと発展性はない。
現に海外向けの仕事は好調だ。例年であればこの時期はタイ国内を仕事で走り回っている私だが、この記事は北米で書いている。北米の景気はすこぶる良い。マーケティングを行いながら、それを実感している。すでに1カ月ほど滞在して、タイ生産と日本生産の両面で営業活動をしてきた。こちらでは現地調達以外の供給元は日本とタイである。北米に拠点を置く自動車メーカーの部品がタイから送られてきているのだ。
中小企業の我々も、これからはタイでのものづくりを海外に売り込んでいかなければならない。会社を伸ばしていくには、タイ国外からの直接受注も検討すべき時代が来ているのだ。
これまでは、タイの政府や商工会が熱望する新分野がタイに根づくタイミングを計り、その業界に参入するという流れだったが、今後はそこでコスト競争をするだけでなく、自社の強みを生かして異業種に参入する努力も必要とされるだろう。
北米は今、マイナス20℃。とても寒い。南国奮闘録が北国奮闘録になってしまった(涙)。
海のものとも山のものともわからないが、成長への模索は果てしなく続く。