タイで健闘する日系IT企業
新型コロナウイルス(COVID-19)に毅然として立ち向かって成果を出しているバンコクの日系IT(情報技術)2社を紹介したい。「ベリーモバイル(berrymobile)」をサービスブランドとするa2network (Thailand) Co., Ltd.(伊藤大己社長)では、タイに住む日本人、日系企業向けに仮想移動体通信事業(MVNO)、モバイル回線(SIMカード)、モバイル端末(携帯電話)、モバイルWi-Fi、クラウド型法人向けモバイル管理・セキュリティ統合アプリ(SaaS)、ローミングソリューション(海外向け各種通信サービス)などを展開している。同社を利用している日系企業には製造業が多いが、銀行、保険、飲料・食品など多業種。 「コロナ」問題で日系タイ企業・タイローカル企業が在宅勤務、テレワーク、WEB会議などで「バックオフィス機能」の必要性が急速に高まったことに対応して、同社では3月下旬からリモートワーク応援プログラムを矢継ぎ早に打ち出し、成果をあげている。 一方、タイ唯一の日系企業向け転職サイト「Jobsugoi.com」(https://www.jobsugoi.com/)をタイ人募集に絞って運営しているOzaki Consulting Co.,Ltd.(尾崎コンサルティング)では人事コンサルティング、WEBやソフトウェア開発、日本企業のタイ進出支援なども行っている。「Jobsugoi.com」の契約企業数は850社。PV(閲覧)数は月30万件以上で新規登録者数は月6,000人を超えている。 転職サイト名は日本語にしたいと考えた尾崎CEOが、タイ人も使う日本語である「すごい」を使って「ジョブスゴイドットコム」と名付けた。同社では「コロナ」問題が深刻化し始めた3月初めから在宅勤務にしてすでに2か月間。就業時間は各従業員が保有するカメラ付きPCでの「ミーティングルーム」を常時接続し頻繁にWebミーティングしながら問題なく業務を進めている「すごい」会社。
2008年9月からタイに進出し「ベリーモバイル」名で通信システムの構築、開発を行っているa2network (Thailand)、2014年1月に登記している「ジョブスゴイドットコム」ブランドのOzaki Consulting Co.,Ltd.の両社とも通信システムの構築、ソフトウェア開発などでタイ政府の投資委員会(BOI)から奨励企業として認証されている。
「ベリーモバイル」のリモートワーク支援
「ベリーモバイル」名で通信システムの構築、開発を行うa2network (Thailand)では在宅勤務でも会社と同じ通信環境で仕事が進められるモバイルWi-Fi「Skyberry GiRa(スカイベリー・ギラ)」という端末モデルのレンタル契約が急増、セキュリティや勤怠管理、「ワークフロー」などの関心も高まり導入企業が相次いでいる。「各パッケージの価格を極力抑え、従来の契約時での制約も排除した」(法人営業部 吉田マネージャー)と説明している。 これまでにタイ味の素やTOTO (Thailand)など日系企業700社の法人会員を抱えている。「コロナ」で影響を受ける企業の多くが、リモートワーク体制の構築に苦心しているが、法人サポートチームでは「非常事態の今こそ、タイで頑張っておられる日系企業、ローカル企業のリモートワークを応援したい」として当初は5月末までを促進期限にしたが、「感染症問題の状況を踏まえて延長ニーズがあれば柔軟に検討したい」(吉田マネージャー)と言う。
高速データ通信枠無制限モバイルWi-Fiレンタル
同社が3月末以降に打ち出したリモートワーク応援プログラムは、(1)モバイルWi-Fiレンタルなど通信インフラサービスの拡充(2)企業情報の安全を強化するセキュリティ対策(3)タイ国内専用プリペイドSIMの在宅勤務者向け拡販(4)クラウド型勤怠管理システム(5)クラウド型ワークフローシステム、の5点。 「コロナ」で在タイ日系企業、タイローカル企業では社員の在宅勤務の必要性に迫られたが、自宅には高速で安全なネット回線を持たない社員が多い。マンションやアパートなどの共有Wi-Fiを業務に使えばセキュリティ上の不安がある。また、他社のモバイルWi-Fi(ポケットWi-Fiと呼ばれることが多い)には3GB、10GBといった高速使用での限度枠が設定され、この契約容量を使い切ると通信速度が急に落ちることからテレワークの会議を中断させたりする恐れもある。しかしa2network (Thailand)の「SkyberryモバイルWi-Fiレンタル」ではタイ全土で普及した4G(LTE)通信による高速インターネット通信(True回線利用)が無制限で利用できる。 「SkyberryモバイルWi-Fiレンタル」ではWeb会議やクラウドサーバーへのファイル更新も通信量を気にせずに使える。また、リモートワークを行う企業の全従業員、一部従業員をネット上に集めて行う各種会議に対応できる。「製造加工業のOizuru THAILANDをはじめ、製造業、銀行、保険、飲料・食品など多業種で導入されている。Classmethod(Thailand)など初の企業からのオーダーも頂けた」(同)と言う。 a2network(Thailand)ではリモートワーク応援プログラムの一環としてモバイルWi-Fiレンタル「Skyberry GiRa」の無制限使用での料金も抑えた。感染リスクを少しでも抑えるため、全ての手続きやピックアップ・返却はリモート(メール・電話・メッセンジャーによる端末デリバリー)対応している。
「勤怠管理」で在宅勤務を支援
自宅勤務ではタイムカードを読み込めないし、本当に自宅で勤務しているかどうかも分からない。そこでa2network(Thailand)では「JOBCAN勤怠管理」の販売も促進している。バックオフィス支援サービスを展開するDonuts社(日本・東京)の「クラウド型勤怠管理システム」で、タイではDonuts社タイ法人とともにa2network(Thailand)が販売を担当している。「JOBCAN勤怠管理」で導入企業が初期設定の代行サービスを希望する場合に必要だった手数料2万バーツをプロモーション期間中は無料にした。申請・承認業務の効率化ができる「JOBCANワークフロー」、クラウド型(SaaSモデル)法人向けモバイル管理・セキュリティ統合アプリのWizberry(ウィズベリー)も初期費用をなくした。
日系企業850社が利用転職サイトJobsugoi.com
タイ唯一の日系企業向け転職サイトである「ジョブスゴイドットコム」(Jobsugoi.com)は、タイ企業や日本以外の外資系企業を主対象としている他社の転職サイトとの競合が少ない。「Jobsugoi.com」に登録しているタイ人は日系企業で働いた経験がある人、日本語人材、英語人材が多い上に日本に留学した経験者も多いので、日本人と一緒に働くことに慣れているタイ人を採用しやすく、「当社サイトで就職した人の退職率が圧倒的に小さい」ことが同社の誇り。 また、日本人経営の人材紹介会社では、その人材紹介会社が提案した候補者の中からしか選べないが、「Jobsugoi.com」では閲覧数が月30万件以上、新規登録者数は月6,000人、累計15万人以上という大データから候補者を直接選べる。人材紹介会社では1人の採用ごとにその採用者の2~3か月分の給与にあたる紹介料を人材紹介会社に支払わなくてはならないが「Jobsugoi.com」では掲載期間中は掲載料金のみで採用し放題だから「採用コストが激減した」と喜ぶ日系顧客が多い。掲載期間中の採用者が多いほど1人当たりの採用コストが下がることになる。 さらに「Jobsugoi.com」では契約企業が応募者に直接連絡できるため面接の設定がスムーズで人材紹介会社では必要となる複雑なプロセスが不要。応募者の履歴は応募者本人が書き同社が履歴に手を加えたりしないことから、(応募者の履歴を見て)各応募者の語学力などを企業側が判断できる。
申込み当日の求人掲載も可能
「Jobsugoi.com」はインターネット上の運営のため、申し込み当日に掲載を開始、翌日の面接で決まるケースもあるなど、スピード採用できる点を評価する日系企業も多い。また、タイのローカルの求人サイトでは募集内容の変更をしたい場合、再度料金の支払いが必要となるところもあるが「Jobsugoi.com」では契約期間中であれば複数ポジションの採用を行っても初回に支払うシステム利用料以外の費用が発生しない。タイ語の「求人 日系企業」の検索キーワードで「Jobsugoi.com」が1位。フェイスブックではフォロワー数27万人以上で候補者同士の拡散が「Jobsugoi.com」ブランディング確立に役立っている。
20年6月1日掲載