創業30余年の物流機器・木工製品メーカー コロナ禍でも継続する開発力の強化
バンコク北郊パトゥムターニー県の田園地帯にあるSankho Kaihatsu Co., Ltd.(三光開発株式会社)は、1988年12月創業の同族企業。物流機器や木工製品等の開発・製造・販売を業とし、主要な取引先はタイに生産拠点を持つ日系企業だ。相談のしやすさと親しみやすさで知られ、顧客からは「中條(兄弟)がいるから利用しているんだ」と評されるほど。「どんなに少しでもどんなに小さくても、どんな相談事でも懇切丁寧に」をモットーとした、好奇心と意欲でいっぱいの日系ローカル企業だ。
工業用篩事業をスタート
唐木原木・床柱・突板などの製造・輸出販売をタイで手掛けてきた現会長の中條一氏(83)が30年以上も前に設立した。90年には工業用篩(ふるい)の製造販売事業をスタート。品質に優れていることから日本の製粉会社、精米機メーカーや飼料メーカーなどから引き合いも寄せられ、ほどなく日本向け輸出を開始。主要事業として現在も続いている。中條会長の在タイ歴は58年。現在会社を率いる2人の息子はタイで出生した。 開発担当マネジャーを務めるのが次男の和孝氏(47)だ。顧客のニーズを真摯に受け止め、オーダーに会わせた製品開発を心がけている。91年から始まった倉庫などの物流施設で使われる保管用スチール製ラック「ネステナー」の製造販売事業を担当する。スタート当時のタイには存在しなかった新規事業も、ほどなく新興国などからコピー商品が多数市場に投入されるようになった。だが、仕様書どおりの精度と品質で見事、差別化に成功。オーダーメイド型の供給が喜ばれている。 一概にスチール製ラッキングシステムと言っても、用途とニーズはさまざま。大きさや床重量、耐荷重、フォークリフトを使用するかでシステム、形状も素材も異なってくる。ラックに最適なパレットの調達・販売やフォークリフト会社の紹介も合わせて行っており、こうした臨機応変の一貫供給が最大のセールスポイントだ。 顧客は一般工業製品メーカーから食品メーカーまでこちらも多種多彩。「ローカル企業に比べ多少の価格上昇はあっても、日本人担当者が常駐していることで安心してもらえる」のが強みだ。 三男の三男氏(44)が入社したのは2003年。日本の高校、大学へと進学し、日本で仕事に就いて間もなくのころだった。世代代わりを模索する父の求めもあってタイに帰国。和孝氏と二人三脚で家業を継ぐことにした。「会社全体を統括するのは弟のほうが向いている」という意見もあって、父から引き継いで代表取締役社長に就任。17年のことだった。それから3年、兄弟の役割分担もすっかりと板に付くようになった。
東南アジア市場にも活路
「僕ら(息子たち)にバトンを渡してからというもの、父(会長)は仕事に全く口を挟まなくなった」と三男氏は振り返る。会社に来てもほぼ毎日、役員室で新聞や雑誌に目を通すだけ。無言の期待がそこにはあった。 こうしたころ、自分たちの判断で真っ先に導入を決めたのが2台のNC(コンピュータ制御)加工機だった。「事業の幅を広げるためには必要だと判断した」と三男氏。世代交代が行われてから初めての大型投資案件となった。 工業化の進むタイ市場も汎用品の大量生産から少量多品種生産へと変革の時期を迎えていた。ベニヤ板の加工一つをとっても、求められる誤差はわずか±0.5~2ミリ以下。ローカルの協力工場への発注も可能だったが、リアルタイムでの対応や品質を保つためには一部の内製化は必須と考えた。木材加工の注文に合わせて2台をフル稼動。「木工を中心に当社が加工業務を得意としてきたことを改めて実感した」と和孝氏は話す。 父が興した篩事業を、成長著しい東南アジア市場に広げようという取り組みも行っている。すでに導入実績はマレーシアにインドネシア、ベトナム、カンボジアなど複数国に及ぶ。いずれも地縁も紹介もなかった未知の領域ばかりひたすら足を運んでカタログを置いていくという、地道な飛び込み営業を重ねた結果だった。近年は衛生面の観点から金属やプラスチック樹脂を使った新しい篩の需要も得て、新製品の開発も手掛けている。木片などの異物混入を嫌うメーカーなどから引き合いが高まっている。
取引先との長い付き合いを
新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた2020年は一時、物流機器に関しては売り上げが大きく激減。ほぼゼロとなった月もあった。一部の業種の中国市場の復活で9月ごろから回復基調にあるというものの、未だ往時の勢いには戻っていない。2021年も我慢の日々が続きそうだ。 こうした中にあっても継続をしていくと力を込めるのが「開発への取り組みだ」。担当の和孝氏は言う。「顧客や市場が何を求めているのか。それに常に敏感でなければならない。何でも試す、何でもやってみる。開発の継続が大切だ」と。その和孝氏と社長の三男氏。2人が持つ名刺にはいずれも「NOT A ONE TIME SERVICE」と、ひときわ大きい赤字のキャッチコピーが描かれている。直訳すれば「サービスは1度きりではありません」。 その真意を三男氏が解説してくれた。「僕らはタイにずっといるので、製品を納めたら、それで終わりということではない。取引先が安心できる長い付き合いをしていきたい」ということだ。
2021年2月1日掲載
会社情報
会社名 | Sankho Kaihatsu Co.,Ltd. |
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住所 | 14/10Moo1, Soi Pamuang Klong Nueng, Klong Luang, Pathumthani12120Thailand |
お問い合わせ先 | Tel:02-901-3760-1Fax:02-516-3070 http://www.sankho-kaihatsu.co.th |
担当者名 | 中條和孝 携帯:086-660-0071 E-mail:sankhokaihatsu@gmail.com シーデン(タイ語)携帯:081-689-2838 E-mail:info@sankho-kaihatsu.co.th |