創業100年超える商社がタイ進出 刻印機、熱処理冶具などを展開
1910年創業の出石(本社:京都府京都市、出石篤社長)は製造業関連の商社として100年を超える歴史を持ち、日本国内では14拠点、1工場を展開。2013年には、中国の山東省に合弁企業として東営出石国際貿易有限会社を設立している。そして今年7月、タイのバンコクに現地法人の出石タイランドを開設した。5代目の出石社長に進出の背景や日本の製造業への思いを聞いた。
機械工具販売軸に多彩な事業展開
出石の日本国内での主な事業は4つ。創業以来、手掛けているマシンツール事業は今でも同社の根幹事業となっている。仕入れメーカーの90%が直取引で、高いレベルのQCD(品質、コスト、納期)を実現しているほか、約8万点のアイテムをストックして即納体制を整え、各拠点には切削工具の専門員を配置。顧客の生産性向上をサポートしている。また、アフターサービスとして工具の再研磨やリサイクルも行っている。
その切削工具のノウハウを生かしたのが、PB(プライベートブランド)事業。「i-TOOL」ブランドでは、難削材加工に最適なダイヤモンド工具を提案している。また、従来のセミドライ加工(MQL)に代わるドイツ発の新セミドライ加工用装置「ATS」は、0.1μm単位の微粒子エアロゾルを工具の刃先に安定供給し、優れた潤滑性能を発揮、加工熱を抑制する。他にも、海外を中心に優れた性能を持つ製品または国内では調達が困難になった製品を調達し、PB展開している。
また、自動車産業を中心にトレーサビリティが一層重要視される中で、刻印機への需要が増大。2008年から出石でもフランスのTECHNOMARK社製刻印機の独占販売を開始し、新事業として取り組んでいる。その他、滋賀県の自社工場や協力工場ではセラミック材料を専門に受託加工も行っている。溶射、肉盛り、コーティングなど部品への各種表面層改質、熱処理冶具も提供している。
タイでは当面、刻印機と熱処理冶具、炉内部品の販売を行う。刻印機に関しては日本では納入台数が伸びている反面、海外進出した顧客が現地調達に切り替えるケースが出ていた。「近年、トレーサビリティが工業製品の絶対条件になってきていることもあって、ここ10年ほど、日系自動車メーカーを中心に刻印機が多く納入されています。その中で、アフターサービスを含めてタイも取り込みたいということで、一つの事業として考えています」と出石社長は語る。
タイ政府はタイランド4.0を掲げて、産業高度化を目指している。製造業ではFA化が一つのキーワードになっているが、その自動化においても刻印機が欠かせない。「この部品は何か?ということが分からないと自動化はできません。今は生産工程がネットワーク化されており、何の部品がどこの工程でどんな加工をされているのか、すべて一元管理されています。社内の生産工程を管理するためのトレーサビリティという面もあります」(駒井孝光執行役員)。
凹凸もカバー、エアー源要らずの電磁式刻印機
同社が扱うフランスのTECHNOMARK社製刻印機の特徴の一つが、エアーを使わないため、電源だけで導入できること。電磁式なのでエネルギー効率も良い。「通常のドットマーキングは、エアーと電気の2つを使います。電気だけで使えるので省エネにもなり、環境保護に力を入れている企業様にはメリットを感じていただいています」(駒井氏)。
また、エアー式の刻印機は刻印面に1ミリ程度の凹凸があるとマーキングができなくなるのに対し、TECHNOMARK の刻印機はIDI機能(インテリジェンス・ドライビング・インパクト)があり、ボタン一つ押すだけで刻印面に合わせて高低差7ミリを追随して打刻することができる。「1mm、2mmくらいの誤差は問題ありません。メリットに感じていただくのはダイカスト工場のお客様ですね。特別な冶具、センサーを付けなくても打てるので、ラインを組まれるユーザーにも喜ばれます」(駒井氏)。電気式のため深彫りがしやすく、塗装や熱処理などの後工程がある場合も、マーキングが消える心配がない。空打ち検出機能も備えている。
熱処理冶具をタイで手掛けるのは、タイに高炉がないことが背景にある。鉄鋼でも自動車部品に利用される素材は潤沢に出回っているが、熱処理冶具に使われるような耐熱金属となると数は限られる。購入しようとすると、ロットが大きくなってしまう。そのため、耐熱金属ではない金属の部品でやりくりせざるをえなくなり、部品寿命が短くなってしまうという。耐熱金属を使った部品なら、イニシャルコストは高くなるがランニングコストで見たときに長持し、廃棄交換の手間もなくなる。
これら2つの事業に加え、2年目以降は特殊工具などの展開も予定している。工作機械メーカーOBでタイ駐在経験もある柳谷幸治氏がタイに常駐。駒井氏も出張ベースでサポートに入る。将来的にはタイを起点に東南アジア全体をカバーする方向だ。
出石では国内500社、海外はヨーロッパを中心に20社ほどの仕入れ先メーカーとのパートナーシップのもと、日本の製造現場の生産性向上をサポートしてきた。出石社長は「なるべく先端を行くような商材を日本に持って来たいと思っています。品質、コスト、納期のQCDの中で、コストについてはこれまで日本でかなり言われてきました。ただ、日本が今後もモノづくりで勝っていくためには、コストだけに終始していてもいいのか、と思います」と話す。かつて量産加工に強みを発揮していた日本では、5軸加工機の割合が欧米などに比べて劣っている。「日本は従来の加工法から大きく変わっていない面もあります。世界は変化しています。強くなるためには、今まで通りというわけにはいきません。世界中から優れた商品やサービスを持ってきて、日本の競争力あるモノづくりに役立ちたい」。
出石社長は機械工具メーカー勤務を経て、1997年に出石に入社。2010年に社長就任後、社員の意識変革にも努めてきた。「面白いことならどんどん挑戦していこうという形にしていきたい。今回のタイ進出も、そこまでする必要はないという意見もあるだろうけど、まずは一回やってみようと考えました。これからタイで必要とされるようなことを見つけていきたいですね。今あるもののリプレイスではなく、まだ要らないと言われるかもしれないですけど、これから市場が広がっていくようなサービス、商材を提案したいと思います」。
会社情報
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