タカハシ社長の南国奮闘録
第105話 社内風土をつくる
新型コロナウイルスの影響によりタイへ渡航ができない今、私が日本でしている改革についてお話ししたい。 6年前、岐阜県郡上市に大型設備、多品種少量生産の工場を建てた。私にとってはタイ工場と同様、とっても思い入れのある工場だ。航空機部品を切削するための大型五面・五軸加工機械のほか、800角FMSライン、多面パレットの横型マシニングセンター複数台、2000Φを加工できる複合縦型ターニング旋盤や、長尺3000㎜までを加工できるNC加工機などバリエーション豊富に機械を取りそろえ、各オーダーに幅広く対応している。 敷地面積は4000坪、工場は1000坪ほどの規模である。数十か所の候補地の中から郡上市白鳥町にある工業団地を選んだ理由は、経営者の直観と言いたいところだが、郡上市役所の職員の方々が工場建設に対しとても熱心だったのが一番の決め手だ。 郡上の人たちはとても働き者で地元愛が強い。現段階で郡上市内でのコロナ感染者はゼロ。工場の操業にも全く影響はない。郡上市の団結力にとても助けられている。そんな地元の方を少しでも多く採用し、郡上が潤うよう誇りの企業になりたい。 しかし、まだ力不足で、操業を開始してから色々なところにひずみが出てきている。特に教育面に時間をかけられず、生産への影響が表面化してきた。管理ラインの人たちのコミュニケーション不足で別ラインとの連携がとれておらず、担当部門しかオペレーティングできない。工場内の他部門への協力や、ワークシェアするための教育が整っていないのだ。このままでは郡上の人を新規採用しても良い体制で迎える事ができない。 コロナの影響も減って生産は徐々に戻りつつあり、新規の仕事も入り始めている。経済が勢いを盛り返す前に社内の体制を変えないといけない。あまり時間はないようだ。会社を変えるために重要なことは、社内風土の構築だ。そこで鍵となるのは社長の本気度である。風土の定着には社長自身の愛がなければ誰もついてこない。苦楽を共にし、同じ釜の飯を食い、泣いたり笑ったりしながら工場に愛情を注ぐ。そうして着実に時間をかけていかなければ社内風土は変えられない。 私が実行していることと言えば、笑顔と大きな声であいさつをする、朝一番に会社に行き掃除をする、社員との日常的な会話や飲みニケーション、社員の前で自分がどんな人間であるか、今テクニアの未来に対しどんな考えを持っているかをしっかり伝える。すべきことは当たり前のことだが、それに全力を注ぐ事で当たり前が変わっていく。それをしっかりこなしたうえで内部の問題を一つ一つ共に解決していく。現在は納期、品質、リードタイムの改善に力を注いでいる。この結果はあと数か月もすればはっきり出る。 人生の大きな谷は 大きな山となって表れてくる。コロナ渦という大きな谷から抜け出し始めた今、さらなる高みを目指して邁進していく。コロナが終息を迎えたころには郡上工場はしっかり生まれ変わっている。その次はタイ工場の改革に力を注ぎたい。 そんなイメージを膨らませ、改革の地道な一歩一歩を積み重ね、芽吹き始めたものづくりのこれからを楽しみにしたいと思う。
2020年10月1日掲載