一期一会、相思相愛の人材紹介目指す 自ら大学で人材育成にも取り組む

1%前後を推移するタイの失業率。人材の流動性の高さは、今さら語るまでもないだろう。それでも、一期一会、相思相愛…そんな思いを胸に人材、企業双方にとって最良の出会いを目指す人材紹介会社がある。2002年設立のDee Staff Recruitment。同社を設立した田中康之MDは20年近い業界キャリアを持つエキスパートだ。2,000社を超える企業と常時連絡を取り合い、最新の求人情報や職場環境を適切に把握。最近では、優秀な人材育成に向けて新たな取り組みも始めている。同社の現況を田中MDに聞いた。

10以上の大学で寄付講座を実施

田中MDは大阪出身。銀行員時代にタイへ3年間派遣され、部品メーカーで総務や経理、人事を担当。製造現場のイロハを学んだ。その後、タイで人材紹介会社に転職し、2002年にDee Staffを立ち上げた。

同社の特徴の一つが、自ら育てた人材の紹介もできること。グループ企業と協力を行い、実践的なウェブ、プログラミングなどITに関する寄付講座を2014年からタイの大学でスタートさせ、現在はチュラロンコン大学やキングモンクット工科大学ラックラバン校、シーナカリンウィロート大学など11校に拡大している。その他にも、今年に入ってラチャマンガラ工科大学クルンテープ校でビジネス日本語の授業を実施。ビジネスシーンでの実用的な日本語だけでなく、ビジネスマナーを含め、日系企業に就職後の働き方などを田中MDらが学生たちに講義した。

提出された履歴書や一般的な面接では、人材の限られた面しか見ることが出来ない。寄付講座なら1学期を通して、試験の成績だけでなく、授業態度、将来の夢、個人の嗜好など、各学生を継続的かつ多角的に観察することができる。総合的な評価を踏まえて人材を紹介することで、採用後の早期解雇、自己都合退職の可能性の低減につながる。企業側が希望すれば、授業参観も可能という。もちろん寄付講座の卒業生以外にも、同社には転職を希望する経験豊富な人材が多数登録されている。

同社では人材のメールマガジンを約2,000社に配信。経験や知識の特徴ごとに厳選した人材を日本語、タイ語で紹介している。日本人の紹介にも力を入れており、日本の企業とも提携を行っている。タイで働きたいという日本からの問い合わせも、毎日のように入って来る。

人を大切に全員と面談で人物把握

また、同社では人材との面談に力を入れている。アユタヤやラヨーンなど遠方にいる人材でも、求職者の都合に合わせて、平日の夜または土曜日を活用して面談を行っている。タイ人および日本人のコンサルタントが、タイ語、英語または日本語で、経歴や希望を聞き、求人案件を説明する。親身、親切をモットーに、良好な人間関係の構築を念頭に置き、登録後のスムーズな紹介につなげる。現在はテクノロジーも進化し、電話やスカイプでの面接も可能となった。履歴書や職務経歴書のキーワード検索で人選、紹介することもできる。極端な話、クリックひとつで応募できてしまう。それでも田中MDは「実際に人材と会うのと会わないのでは、まったく違うと思うんです。例えば、レジメに付いているのは卒業式の写真で、髪型、雰囲気なども今と異なっていることが多い。非効率的ですが、基本的に全員とお会いしたいと思っています。採用面接後、お客様から必ず“この人材についてどう思いますか”“我が社に合いますか”と聞かれます。その時に、しっかりと答えられる人材紹介会社でありたいと思っています」と語る。

企業への訪問にも時間を掛けている。オフィスや工場の規模、現地までの道のりなど、電話やメールのやりとりだけでは分からない情報を収集するためだ。「電話やメールのやりとりだけでは分からない内容が多いので、会社を訪ねて製品や工場を見せてもらったり、担当者とお話したりします。企業の様子や特長、担当者の人柄などを人材に教えたいからです」と田中MD。日系企業の中にはタイ語のホームページなどが未整備で、情報が乏しい企業も多いので、人材に多くの情報を伝えられるよう取り組んでいる。

日タイ日本語・テクノカルチャー教育研究所設立に協力

田中MDはこの程、ラチャマンガラ工科大学クルンテープ校に開設が予定されている、日タイ日本語テクノカルチャー教育研究所(仮称)のコミッティーメンバーに加わった。きっかけは寄付講座を通して、同大学で日本語を教える中川サワリー教授と知り合ったことだった。国際交流センターの所長も務める中川教授の専攻は言語学で、これまでタマサート大学や日本の名古屋商科大学、名古屋工業大学などでタイ人や世界中の留学生に日本語を教えて来た。中川教授は「長い間お世話になった日本に感謝の意を表し、何か貢献できないかと考え、日本語の言語理論の研究ができ、インダストリー4.0への日本企業に役立つような日本語教育、つまり、テクノロジーの中で、工学やビジネスの知識も養成する日本語教育を行うコースを設け、言語理論の研究や日本企業から講師を招いて講演などを行える場として日タイ日本語・テクノカルチャー教育研究所を計画した次第です」と話す。

ドイツでは製造業の高度化を図るインダストリー4.0が提唱され、タイ政府もタイランド4.0を掲げて高付加価値産業の育成を目指している。今、新たな時代にマッチした人材像が求められている。中川教授は「インダストリー 4.0の時代に入り、製造業がグローバルかつ高度にデジタル化され、より高効率な生産を目指すテクノロジーの時代を迎えています。テクノロジーは人間の才能によって生まれるものです。技術、つまりテクノロジーに関して優秀な人材が社会のニーズとなっていくのは、インダストリー 4.0の特徴でもあります。技術者のみならず、例えば通訳のような人材もテクノロジーに関する知識が必要になるでしょう。工学、テクノロジーの知識に加えて日本語能力を備えた人材は今後ますます必要となってきます。本センターの取り組みは、まさに求められる人材の育成になくてはならないものだと思います。本センターは日本の大学の恩師の方々をはじめ日本の日本語教育支援機関からのご協力をいただいています。一般企業様のご理解と協力もいただければ大変幸甚です」とコメントする。

同センターでは日本に役立つ活動を円滑に行うため、協賛金を募集している。

新たな取り組みをスタートしている中だが、田中MDは「今まで通り愚直に人を大事に、お客様と直接会う中で、血の通った温かみのある人材紹介を続けていきたい」としっかりと足元を見つめている。

会社情報

会社名 Dee Staff Recruitment Co., Ltd.
住所 43 Thai CC Tower, Room #56, 5th Floor., South Sathorn Rd., Sathorn, Bangkok 10120
お問い合わせ先 人材のご相談、テクノカルチャー教育センター(仮称)へのお問い合わせ Tel:0-2673-9830 E-mail:j-info@deestaff.com まで
担当者名
  • Facebook
  • twitter
  • line

関連記事